1997 Fiscal Year Annual Research Report
異種心移植モデルにおける胎児期ドナー特異的免疫寛容状態の誘導
Project/Area Number |
09771017
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
平松 健司 東京女子医科大学, 医学部, 助手 (70221520)
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Keywords | 異種心移植 / 胎児 / 免疫寛容 / 骨髄細胞 / dendritic cell / endothelin / 染色体分析 / 拒絶反応 |
Research Abstract |
目的:異種心移植モデルを使い、ドナーの骨髄細胞より摘出したdendritic cellを増殖させ胎児ラットの腹腔内に注入し、ドナー特異的免疫寛容状態を誘導し移植心の永久生着をめざし、かつ免疫寛容成立のメカニズムを解明することを本研究の目的とした。 方法:8週齢の純型ゴールデンハムスターの長管骨より採取した骨髄細胞をpreparationし、anti-IL10抗体と反応するdendritic cellのみを電気泳動法により分離・培養。次に妊娠9日目の純型ルイスラットを麻酔後、開腹して子宮内の各胎児ラットにハムスターのdendritic cellの培養液を0.05mlずつ(細胞数16x10^7個)注入し閉腹。ラット出生後8週目に8週齢の純型ゴールデンハムスターの心臓をラットの腹腔内へ異所性心移植を行った。移植後毎日心拍動を触診にて確認し、生着日数を観察した。(n=8)コントロール群として同じ手法で培養液のみを同量注入した胎児ラットが出生後同時期にハムスターの心臓を異所性心移植させ(n=8)、生着日数をdendritic cell処理群と比較した。また、移植心より分泌されるEDRFとEDCFのバランスが拒絶反応の指標になるのではないかという仮説にもとずき、血漿サイトカイン(endothelin vs adrenomedullin)の定量を移植後2日目に移植心より直接採血して行った。(各群n=5)(平成9年度) 結果:コントロール群では移植後2-3日(平均2.3日)で拒絶されるのに対し、dendritic cell処置群では9-35日(平均23.7日)と有意に生着延長効果が認められた。コントロール群ではendothelin/adrenomedullin比が、dendritic cell処置群より有意に高値を示した。 考案・結論:ドナー由来のdendritic cellをレシピエントの胎児期(妊娠1/3期)に注入することにより、ドナー特異的免疫寛容状態を部分的に誘導できたと考えられた。また、endothelinが拒絶反応に関与している可能性が示唆された。 尚、本研究の要旨は第51回日本胸部外科学会総会(1998年10月東京)にて発表予定である。 来年度は、dendritic cellで処置したラットが出生後いつまでハムスターとのキメリズムを継続しうるのかを観察するために,出生後経時的にラットの長管骨より骨髄細胞を採取し、染色体分析を行う予定である。また同時に、採取したラットの骨髄細胞とハムスターの骨髄細胞との混合リンパ球培養試験(MLR)を行い拒絶反応がいつまで起きていないかをも調べる予定である。 本研究はすべて東京女子医科大学付属日本心臓血圧研究所研究部において行われたものであり、現在までにすでに用意されている器具・薬品を利用し、実験用家兎も当研究所より提供されたので、今回の助成金はすべて移植心を縫合する際必要となる縫合糸の購入費、及びサイトカインの定量費に充てられた。
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