1998 Fiscal Year Annual Research Report
脳腫瘍における低酸素細胞の増殖能と糖およびアミノ酸代謝に関する研究
Project/Area Number |
09771028
|
Research Institution | Akita University |
Principal Investigator |
笹嶋 寿郎 秋田大学, 医学部, 講師 (40235289)
|
Keywords | 脳腫瘍 / 低酸素細胞 / 増殖能 / 糖代謝 / アミノ酸代謝 |
Research Abstract |
今年度はラット可移植性腫瘍株(C6,RG2,W256)について10%FBS添加MEMを用いて単層培養し,SigmaScan Proで計測された任意の3視野内の細胞数に基づいて細胞密度を算出して細胞増殖曲線を作成し,細胞増殖期が定常期であることを確認した.細胞増殖期が定常期と判定された腫瘍細胞への各トレーサーの取り込みは培養液から細胞内へのトレーサーの流入を示す速度定数K_1と細胞内流入が測定時間内に平衡状態に達するトレーサーについては細胞内集積量を反映するVolume distribution(Vd)で評価した.10%FBS添加MEMを三重標識したアミノ酸欠乏10%FBS添加MEM(^<14>C標識チミジン,^<99m>Tc標識DTPA,^3H標識フルオロデオキシグルコース(^3H-FDG)あるいは^3H標識メチオニン)に交換し,5分から60分にわたって細胞と培養液を経時的に採取して細胞内および培養液中の各トレーサー濃度を液体シンチレーションカウンターで測定した.採取による障害細胞および細胞外腔へのトレーサーの集積は^<99m>Tc標識DTPAの集積を用いて補正し,真の細胞/培養液濃度比から速度定数K_1とVdを算出し,増殖能と糖代謝およびメチオニン集積の関連を解析した. ^<14>C標識チミジンの集積速度(増殖能)はいずれの細胞株においても低酸素状態(2および5%酸素)で24時間目には常酸素細胞(20%酸素)の30%以下に低下し,5%酸素で6日間培養されたRG2とW256の増殖能は低値であったが,C6は常酸素細胞と同程度まで回復していた.^3H-FDGの集積速度(糖代謝)はいずれの細胞株でも5%酸素で4時間目に有意に増加し,C6とW256では24時間目に常酸素細胞と同程度まで低下したが,RG2では6日目でも増加していた.2%酸素ではいずれの細胞でも糖代謝は低下していた.メチオニン集積はいずれの酸素濃度下でもRG2とW256では4時間目に増加し,C6では変化がなかったが,5%酸素で6日目にはいずれの細胞でも増加した.慢性的低酸素状態(5%酸素)における低酸素負荷(2%酸素への変更)では増殖能と糖代謝はいずれの細胞でも有意に低下し,メチオニン集積もW256で低下したが,C6とRG2では有意に増加した.低酸素負荷によりいずれの腫瘍細胞も増殖能は低下したが,^3H-FDGおよびメチオニン集積の変化は細胞株により異なることが判明し,低酸素細胞における糖・アミノ酸代謝および膜輸送の変動が示唆された.
|