1997 Fiscal Year Annual Research Report
蛋白脱リン酸化酵素から見た虚血脳保護への新しいアプローチ
Project/Area Number |
09771055
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
堀口 崇 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (70245520)
|
Keywords | Forebrain ischemia / Delayed neuronal death / Mongorian gerbil / Protein phosphatase / Ischemic torelance |
Research Abstract |
正常脳及び虚血脳におけるprotein phosphatase1(以下PP1)に関する研究は、未だに十分には行われていない。このため、今年度施行した実験の約50%は、再現性に得られる方法の確立を目的とした準備段階に費やされた。 1.免疫組織化学の結果、PP1のisozymeであるPP1α,PP1γ1,PP1δ及びPP2Aは、正常脳において、皮質、線状体、海馬全域にわたって発現が認められた。一方ストレス蛋白の一種であり、虚血脳において発現することが知られているGRP78を標的蛋白としているPP1γ2は、全く発現を認めなかった。また、虚血後の経時的な変化を追った結果、PPγ2を除き、上記の3領域において同様の発現を認めたが、明らかな発現量の変化を捕らえることは出来なかった。細胞内における蛋白の局在は、細胞体内に発現を認めるのみであり、神経繊維には発現を認めなかった。また虚血後の局在の変化を捕らえることは出来なかった。以上より、以前我々が報告した結果を免疫組織化学で視覚的に捕らえることは出来ないと考えられた。 2.in situ hybridization法の結果は、現在報告し得るだけの再現性が認められる方法が、未だに確立し得ていないのが現実である。我々が現在参考にしている方法は、主としてprotein kinaseにおける方法であり、至適な薬剤の濃度、反応時間等が適当ではないことがこの理由であると考えられる。 3.その他の結果として、Okadaic acid(以下OA)の投与を行った。まず、PP2A及びPP1の阻害の影響を調べるために、1000nM/0.1ccのOAを虚血直後に腹腔内投与した。4匹に行った結果、全例が2日以内に死亡した。次にOA濃度を500nM/0.1ccに減じたが、同様に全例が組織学的検討以前に死亡した。少なくともPP1,2A双方の阻害は、虚血耐性獲得以前に、重要な情報伝達系を阻害してしまい、生命そのものが存続し得ない可能性があると考えられた。
|