1997 Fiscal Year Annual Research Report
骨肉腫における多剤耐性遺伝子の発現と転移能についての研究
Project/Area Number |
09771097
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
小田 義直 九州大学, 医学部, 助手 (70291515)
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Keywords | 骨肉腫 / 多剤耐性 / 多剤耐性遺伝子 / 転移 / 悪性腫瘍 / 化学療法 |
Research Abstract |
今回我々はヒト骨肉腫におけるYB-I蛋白の発現とPGPの発現を免疫組織化学的に検討した。 材料は通常型骨肉腫69例のホルマリン固定パラフィン包理切片を使用し、全てが治療前に得られた出検材料であった。組織亜型は骨芽細胞型49例、軟骨芽細胞型9例、その他11例であった。組織学的悪性度はgrade3が17例、grade4が52例であった。25例が同一のプロトコールで化学療法を受けており、good responderは11例、poor responderは14例であった。免疫組織化学はYB-1蛋白のC末端に対するポリクローナル抗体anti-YBCとPGPに対するモノクローナル抗体JSB-1も用いABC法にて行った。YB-1蛋白の陽性コントロールとして乳癌組織を、PGPの陽性コントロールには腎臓の近位尿細管を用いた。またYB-1の発現と増殖能の関係を評価するためKi-67に対するモノクローナル抗体MIB-1の免疫組織化学染色を行い、細胞1000個あたりの陽性細胞数の%をMIB-1 indexとして増殖能の指標とした。 YB-1の発現は69例全例に認められた。このうち細胞質のみに発現を認めたものは37例(図1)、細胞質と核に発現を認めたものは32例(図2)であった。組織亜型では軟骨芽細胞型に高頻度にYB-1の核内発現を認めた(8/9)が、組織学的悪性度との相関は認められなかった。PGPの発現は36例(52%)に認められ組織亜型別ではやはり軟骨芽細胞型に高頻度(8/9)に認められた。YB-1発現を細胞質と核内に認めた32例中26例はPGP陽性であり両者には有意な相関関係が認められた(P<0.0001)。MIB-1の染色が可能であった64例での解析ではYB-1発現が細胞質と核に発現を認めた例のMIB-1 indexが細胞質のみに発現を認めた例より有意に高かった(細胞質発現例の平均22.25、細胞質と核発現例の平均27.81:P=0.049)。YB-1の発現およびPGP発現と化学療法に対する反応は一定の傾向を見いだせなかった。 骨肉腫においてはYB-1蛋白の核内における発現はPGPの発現と相関しており、in vitroの実験や乳癌で報告されているようにYB-1がMDR1の発現を促進していることを示唆する所見であった。さらにYB-1の核内発現は増殖能とも相関しており骨肉腫においてはYB-1が増殖能の制御にも関与している可能性がある。 文献的に軟骨芽細胞型骨肉腫は他の亜型に比較して化学療法抵抗性で予後も不良であるとする報告があるが、本研究における軟骨芽細胞型におけるYB-1核内発現率とPGP発現率の高さがこれらの臨床的事項に反映しているのかもしれない。
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