Research Abstract |
本年度は,無拘束の状態で,μまたはκ受容体アゴニストを脳質内に投与し,痛み刺激を加えたとき,刺激の強さと呼吸の変化を,tai-flickおよびhot-plate試験と横隔神経活動で比較し,さらに反応行動を調べることを目的に実験を行った。 実験にはラットを用いた。ステンレスカニューレを脳室内に挿入しデンタルセメントで固定した。μ受容体アゴニストのDAMGOを1μmol/5μl,4μmol/5μl,16μmol/5μlと増加させ,脳室内に投与した。濃度の増加とともに,行動および呼吸が抑制された。tai-flick試験では,コントロールの4秒から,4μmolでカットオフ値の10秒以上,hot-plate試験では,コントロールの5秒から,16μmolでカットオフ値の15秒以上に増加し,痛みに対する反応が低下した。これらの反応は,ナロキソンを腹腔内に投与(50μg)することで拮抗された。しかしながら,κ受容体アゴニストのDynorphinを10nmol/5μl,100nmol/5μl,1μmol/5μlと増加させ,脳室内に投与するも,行動および呼吸に明らかな変化がなく,tai-flick試験,hot-plate試験でも,はっきりした差は認められなかった。濃度の違いによるのかどうか,より高濃度で実験を行い,違いを調査中である。呼吸抑制のモニターのために,横隔神経の発射活動を導出記録している。ただし,無拘束の状態で慢性実験で記録するために,シリコンで横隔神経を固定したが,長期間にわたると活動が消失するため,別の記録方法も試している。 次年度に向けて,μまたはκ受容体アゴニストをくも膜下腔にも投与し,作用部位による効果の量的,質的違いを比較し,両アゴニストの鎮痛の質と量の違いを明らかにする。
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