1998 Fiscal Year Annual Research Report
皮膚血流量変動の周波数分析により局所の交感神経活動を非侵襲的に評価する方法の確立
Project/Area Number |
09771179
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Research Institution | Nagoya City University |
Principal Investigator |
笹野 寛 名古屋市立大学, 医学部, 講師 (20215742)
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Keywords | 自律神経 / 皮膚血流量変動 / 脳死 / 周波数分析 |
Research Abstract |
自律神経活動を評価する方法として、心拍変動周波数分析が普及している。同様な考え方により、耳垂部皮膚血流量変動を周波数分析し、その低周波成分(0.03-0.15Hz)の大きさが脳幹部の自律神経機能を反映するかどうか調べるため、脳死患者と遷延性意識障害患者の間で比較することにより検討した。 対象:脳幹機能が消失した脳死状態の患者群5名、脳幹機能は保たれている遷延性意識障害の患者群5名。 方法:手指、耳垂部皮膚血流量信号および観血的動脈血圧、心電図第2誘導の波形をインピーダンス呼吸曲線とともにデータレコーダに記録した後、パソコンに取り込み、自己回帰スペクトル法により各信号の低周波成分(0.03-0.15Hz)の振幅を求め、2群間で比較することにより血流量変動に対する脳幹部機能の影響を検討した。 結果:脳死群では変動がほぼ消失していたが、遷延性意識障害群では変動が正常者と同じように存在し、両者の間に明らかな差を認めた。 考察:脳死群における耳垂部皮膚血流変動の消失の程度は、血管運動性交感神経活動の指標とされる血圧変動の低周波成分や心臓に対する交感神経活動の大きさを反映するとされる心拍変動の低周波成分/高周波成分の低下と比較して、はっきりと低下していた。血流量変動は、脳幹機能障害による自律神経機能の廃絶を血圧変動や心拍変動よりも鋭敏に反映する可能性があると考えられた。ただし、前年度の研究で明らかにしたように耳垂部皮膚血流量変動には交感神経活動以外に血管平滑筋原性のvasomotionが大きく影響する。このvasomotionが脳死時の他の内分泌性因子などにより影響を受けていた可能性もあり、今後内分泌ホルモンの分泌の程度と同時に検討する必要があると考えられた。
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