1997 Fiscal Year Annual Research Report
免疫異常に伴う急性感音難聴と蝸牛血管内皮細胞障害の関係について
Project/Area Number |
09771378
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
井上 泰宏 慶應義塾大学, 医学部, 講師 (60193611)
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Keywords | 急性感音難聴 / 免疫異常 / モデル動物 / 血管内皮障害 / 炎症性サイトカイン |
Research Abstract |
MRL/lprマウスは加齢とともに免疫異常を発現し、生後20週令から感音難聴が生じることが報告されている。我々の施設においても、クリック音刺激によるABRを用いて、この聴力閾値の経時的変化について検討したが、現時点まで明らかな聴力閾値の上昇は認められていない。一方、組織学的検討では、これら閾値上昇を認めなかったマウスにおいても、抗マウス免疫グロブリンによる免疫染色で、蝸牛血管条にlgGの沈着が認められたことから、免疫複合体が血管壁周囲に存在することは明らかであると考えられるが、細胞浸潤などを呈する典型的な血管炎の像を示したものは認められなかった。従って、単に免疫複合体が血管壁に沈着するだけでは血管炎による蝸牛機能障害が生じることはなく、別の新たな刺激が加わることで障害が生じる可能性があると考えられた。 そこで平成9年度の研究では、前年度に引き続き、インターロイキン1(1L-1)、腫瘍壊死因子(TNF-α)、γ-インターフェロン(γ-INF)等の炎症性サイトカインをMRL/lprマウスおよびBALA/cマウスの蝸牛において外リンパ潅流することにより、ICAM-1、VCAM-1等の接着分子の発現に変化が生じるか否かについて、免疫染色、western blotting法を用いて検討をおこなった。しかしながら、マウスの蝸牛は我々が外リンパ潅流の実験に通常用いているモルモットにくらべて小さく、脆いため、外リンパ潅流の成功率がきわめて低く、組織学的検討においてもアーチファクトが大きいのが現状である。そこで今後は、炎症性サイトカインを髄液内もしくは腹腔内に投与することによって、蝸牛における変化を検討する予定であるが、さらに内耳の抗原性を高めるため、炎症性サイトカイン投与前に一側内耳を破壊したマウスについての検討をおこなう予定である。
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