1998 Fiscal Year Annual Research Report
細胞外ATPによる内耳前庭神経節細胞の細胞内カルシウムイオン動態に関する研究
Project/Area Number |
09771392
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Research Institution | Kansai Medical University |
Principal Investigator |
井上 俊哉 関西医科大学, 医学部, 助手 (70223261)
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Keywords | 前庭神経節細胞 / ATP / カルシウムイオン / P_2-receptor / 求心性神経伝導物質 |
Research Abstract |
モルモットの前庭神経節細胞を生きたまま単離し、ATP刺激時の細胞内Ca^<2+>動態を検討した。抗ニューロフィラメント抗体(NF200)を用いて単離した前庭神経節細胞を同定した。単離した前庭神経節細胞をATP刺激したところ、濃度依存的に細胞内Ca^<2+>濃度の上昇が観察された。細胞外Ca^<2+>-freeの状態においてもATP刺激にて細胞内Ca^<2+>濃度の上昇を認めた。これらのことから、ATP刺激による細胞内Ca^<2+>濃度上昇は外部動員および内部動員の両者に依存するものと考えられた。次にATPの受容体であるP_2-purinergic receptorの拮抗剤であるReactive blue2、Suraminそれぞれの存在下では、ATPによる細胞内Ca^<2+>濃度の上昇は両者共に濃度依存的に抑制された。 P_1-purinergic receptorに親和性を有するAdenosine刺激では、細胞内Ca^<2+>濃度の変化は認められなかった。これらのことから、モルモット前庭神経節細胞にP_1ではなくP_2-purinergic receptorが存在し、ATP刺激による細胞内Ca^<2+>濃度の上昇機構はP_2-purinerric receptorを介したものであることが示唆された。また陽イオン透過性カルシウムチャネルのblockerであるLaCl_3の存在下では、ATP刺激時の細胞内Ca_2濃度の上昇は抑制され、電位依存性L型カルシウムチャネルのblockerであるNiffedipineの存在下では抑制されなかった。これらのことから、外部動員による細胞内Ca_2濃度の上昇機構はLaCl_3-sensitiveなカルシウムチャネルからの流入によることが示唆された。以上のことから内耳前庭において細胞外ATPが求心性の神経伝達物質または神経修飾物質としての働きがある可能性が示唆された。
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