1997 Fiscal Year Annual Research Report
フリーラジカルスカベンジャーによる網膜虚血再潅流障害の防御
Project/Area Number |
09771418
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
小島 秀伸 信州大学, 医学部・付属病院, 助手 (40262729)
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Keywords | 網膜虚血-再潅流障害 / ADF / 網膜神経細胞死 / 過酸化脂質 / 細胞周期関連遺伝子 |
Research Abstract |
ラットの網膜虚血-再潅流障害モデルを用いて,フリーラジカル消去能を持つ成人T細胞白血病由来因子(ADF)の網膜神経細胞死に対する防御効果の有無について検討した。7週齢のSDラットに対し,高眼圧負荷(110mmHg)により60分間の眼虚血後,眼圧を正常に戻し血流を再潅流させた。ADFの投与は虚血直前と再潅流直後にそれぞれ0.5mg(in 0.4ml PBS)ずつ尾静脈より投与した。コントロール群には虚血直前と再潅流直後にそれぞれ0.4ml PBSのみ投与した。ADFの網膜虚血-再潅流障害に対する防御効果を評価するために,電気生理学的に網膜機能を反映する網膜電図(ERG)の記録,組織学的に網膜内層厚の計測,そして網膜神経細胞死(主にアポトーシス)の検出としてTUNEL染色を行い,TUNEL染色陽性細胞数の計測を経時的に再潅流後1日から28日目まで行った。ERGの記録において,a波(視細胞由来)の振幅の回復はADF投与群とコントロール群の間に統計学的に有意差は認められなかったが,b波(網膜内顆粒層のミューラー細胞または双極細胞由来)と律動様小波(OP波)(網膜内顆粒層のアマクリン細胞由来)の振幅の回復はコントロール群に比べ,再潅流後7日から28日目までADF投与群で統計学的に有意に良好であった。b波とOP波の振幅の回復率はADF投与群で約55%,コントロール群で約30%であった。網膜内層厚は,再潅流後4日から28日目までコントロール群に比べADF投与群において統計学的に有意に厚く,再潅流後28日目の網膜内層厚はADF投与群で78.5±8.9μm(n=7),コントロール群で46.1±6.4μm(n=7)であった。また、TUNEL染色陽性細胞数もコントロール群に比べADF投与群において統計学的に有意に減少しており,組織学的にもADF投与によって網膜が維持されていることが判明した。来年度は,網膜虚血-再潅流障害における網膜神経細胞死の機序,そしてADFの防御機序について明らかにするためにTBA法によりフリーラジカルの代謝産物である過酸化脂質の網膜内での定量,免疫染色により網膜内での過酸化脂質の局在を検討する予定である。また,網膜虚血-再潅流障害におけるアポトーシスは細胞周期関連遺伝子であるc-jinやcyclinD1の関与が今までの我々の研究から示唆されることから,ADF投与によりそれらの発現がどのように変化するかも検討予定である。
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