1997 Fiscal Year Annual Research Report
緑内障人眼の線維柱組織に分布する細胞外マトリックスの動態解析
Project/Area Number |
09771419
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
海平 淳一 信州大学, 医学部・附属病院, 講師 (80193928)
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Keywords | 線維柱組織 / 細胞外マトリックス / ステロイド緑内障 / 若年緑内障 / 原発開放隅角緑内障 / 電子顕微鏡免疫組織化学 / 多重染色 / TIGR遺伝子 |
Research Abstract |
平成9年度に入り、緑内障眼線維柱組織における細胞外マトリックスの動態を研究するうえで、画期的な研究報告がなされた.すなわち、若年発症する緑内障患者のなかに線維柱組織内の細胞外マトリックスと関連した遺伝子(TIGR)の変異が発見されたのである(Stone etal,Sience,1997).この遺伝子は線維柱細胞にステロイド剤を投与した際、反応性の細胞外トリックス産生に関与すると考えられている.しかしながら、TIGR遺伝子の関与する細胞外マトリックスの正体はほとんどわかっていない.本研究では2例のステロイド緑内障眼の線維柱組織において、抗ラミニン(ポリクロナール)抗体に反応する無定型な細胞外マトリックスの異常沈着を観察した.また、3例の先天緑内障眼、4例の若年緑内障眼の線維柱組織でも抗ラミニン抗体に反応する基底膜様の細胞外マトリックスの異常沈着が観察された.これらの免疫組織化学的所見とTIGR遺伝子との関連を知るために現在、分子生物学的手法を研究に導入し検索中である. 一方、原発開放隅角緑内障眼においては、すでに報告したエラスチンの異常沈着(Umihira et al,1OVS,1994)の他に、エラスチン同様線維柱組織内の弾性線維に局在するビトロネクチンの異常沈着が原発開放隅角緑内障組織のほぼ半数に観察された.しかしながら、残りの半数の組織では異常沈着が観察されていない.このような現象は過去に報告されたことがなく、細胞外マトリックス分子相互の関係をさらに詳細に理解するために多重免疫染色を試みている.現状では、金コロイド免疫電顕染色法の改良により弾性線維の形成に関与するエラスチンとビトロネクチンの2重染色、基底膜の形成に関与するヘパラン硫酸、ラミニン、IV型コラーゲンの3重染色で安定した染色結果を得られるようなっている.
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