1997 Fiscal Year Annual Research Report
ウイルスベクターを用いた動物個体レベルでの網膜神経細胞への外来遺伝子導入-遺伝子治療を目指した基礎研究-
Project/Area Number |
09771425
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
小阪 淳 大阪大学, 医学部, 助手 (40243216)
|
Keywords | アデノウィルスベクター / ラット / 網膜神経細胞 / 網膜初代培養 |
Research Abstract |
ヒト5型アデノウイルス由来発現ベクターAxに大腸菌由来のレポーター遺伝子β-gal-LacZをcytomegalovirus enhancer+chicken β-actin promoter制御下に組み入れたもの(AxCALacZ)を、本研究に用いた。まず第一に本ベクターでラット網膜神経細胞に外来遺伝子を導入発現させることができるかを検定するために、ラット胎児由来の網膜細胞の初代培養系に対して感染実験を行った。2.0mlの培養液中に2.0×10^8pfu/mlのウイルス溶液3μlを滴下し、48時間後にβ-gal活性をX-galの染色により同定したところ、グリア系、神経系双方の細胞種90%以上にβ-gal活性が認められた。この結果は本ベクターが網膜のグリア系、神経系の双方の細胞種に対して外来遺伝子を発現できる能力があることを示している。次に動物の個体レベルでAxCALacZによる外来遺伝子導入を試みた。麻酔下のラットの眼球耳側に30ゲージの注射針で3μlのAxCALacZ溶液を注入した。48時間後に動物を灌流固定し、眼球凍結切片を作成してβ-gal活性をサーベイした。14例中4例で神経性網膜にβ-gal活性を有する細胞が認められた。同細胞はその特徴的な形態からミュラー細胞であると考えられる。in vivoでは、神経細胞と判別できる細胞には、β-gal活性は認められなかった(Fukuharaら、印刷中)。 最終年度には、NRS(neural restrictive silencer)等の神経特異的発現調節領域をベクターに組み込むことにより神経特異的な外来遺伝子発現を目指す予定である。さらにBDNF等の神経栄養因子をAx vectorに現在組換え中である。
|
-
[Publications] 福田 淳: "網膜神経節細胞における形態・機能分化と軸索再生能." 細胞. 29. 13-16 (1997)
-
[Publications] Fukuhara,M.: "Adenovirus vector-mediated gene transfer into rat retinal neurons and Muller cells in vitro and in vivo." Neurosci.Lett.(in press).