1997 Fiscal Year Annual Research Report
網膜移植における分化、神経回路形成に関する分子生物学的解析
Project/Area Number |
09771446
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Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
福島 美紀子 熊本大学, 医学部附属病院, 助手 (10284770)
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Keywords | 網膜移植 / 神経分化 / 神経回路形成 / 神経発生 / Eph受容体型チロシンキナーゼ / 神経再生 |
Research Abstract |
難治性網膜疾患の治療として期待される網膜移植の臨床応用へむけた基礎的検討を行う目的で幼若網膜移植片の生体内における層分化、さらにシナプス形成等の機能分化について解析するため、本研究ではまず、視覚投射系回路が比較的明確なニワトリ胚を用いて発生過程における網膜およびその投射系である視蓋で、神経回路の形成・維持における役割が明らかになりつつあるEphサブクラス受容体型チロシンキナーゼとそのリガンドの発現パターンをジゴキシゲニン標識RNAプローブを用いたin situ hybridization法でみた。Ephサブクラスに属する5つの分子(Chick embryonic kinase(Cek)4,Cek5,Cek7,Cek8,Cek9)のうちCek5は、発生過程のニワトリ網膜において背腹軸に沿った特徴的な発現パターンを示すことを報告した。またCek8およびそのリガンドは網膜および視蓋において相同的に投射に対応する前後軸に沿った発現パターンを示すことが報告された。さらにCek5,7,9は網膜の神経細胞分化過程においても各々特徴的な発現パターンを示すことがわかった。これらの結果よりこれらのEphサブクラス分子が視覚系神経回路形成および網膜神経分化に重要な働きを担っており、視覚回路網形成を解析するうえでの分子マーカーとなりうることが示唆された。次に哺乳動物で網膜移植実験に用いられているラットでの発現を調べるため、幼若ラット脳組織よりmRNAを抽出しRT-PCR法を行い、サブクローニング、前述のEphサブクラス受容体型チロシンキナーゼ分子EphA3,4のラットホモローグを単離した。ラットにおいてもニワトリと同様にこれらの分子が視覚系発生過程において特異的発現パターンを示すことが既に報告されており、今後は幼若ラット網膜片を同種移植した後、移植網膜におけるこれらの分子の発現を検討し、移植後の細胞の機能分化についての解析を行なう予定である。
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