1997 Fiscal Year Annual Research Report
水晶体繊維細胞特異的に発現するMIP遺伝子の発現制御機構の解明
Project/Area Number |
09771485
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
丸山 千秋 理化学研究所, 細胞生理学研究室, 基礎科学特別研究員 (00281626)
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Keywords | 水晶体 / MIP / 転写因子 / Sp1 / AP2 / Maf / 胚発生 / RT-PCR |
Research Abstract |
本研究ではこれまでに、水晶体繊維細胞特異的に発現するMIP遺伝子の転写制御機構について解析し、MIPのレンズ特異的な発現にはSp1及びAP2因子が関与していることを示唆する結果を得た。AP2はレチノイン酸によって発現が誘導される転写因子で、その発現は発生において時間的空間的に制御されている。ノックアウトマウスの表現型より、AP2は胚発生時、特に頭部の形態形成において必須の因子であることがわかっている。またAP2(-/-)のマウスの眼は、眼の形態形成のマスターコントロール遺伝子として知られているPax6のミュータントマウスと同様にレンズの正常な分化が見られない。そこでAP2因子のレンズ分化における役割を解析する目的で、レンズにおける発現をRT-PCRにより解析した。AP2はファミリーに属する遺伝子としては3種(AP2a、AP2b、AP2.2)知られている。また、AP2aについては同一遺伝子からの選択的スプライシングにより4種のアイソフォームがつくられる。Variant 1,3,4はエクソン1でコードされるN末端側が異なるアクチベータ-型、Variant2はエクソン2が欠失したリプレッサー型である。そこですべての関連遺伝子及びアイソフォームについて特異的なPCRプライマーを作製し、5日令マウスより単離したレンズを含む9種の組織についてRT-PCRによりそれらの発現を解析した結果、レンズにおいてはAP2aのみが発現していた。in-situPCRによりレンズのなかでも上皮細胞で発現していることが明らかになった。さらに4種のアイソフォームのうちVariant 1,2,3の3種とVariant5と名付けた新しいアイソフォームが発現していることが明らかになった。Variant5はエクソン2のなかでもプロリンに富む転写活性化ドメインのみを欠失したリプレッサー型で、C末端側にコードされるDNA結合領域及び、二量体形成ドメインは持っていることからドミナントネガティブに機能する可能性がある。また最近ニワトリのレンズ特異的な遺伝子発現に重要な働きをしていることが明らかになったMafファミリーに属する転写因子をマウスから単離することを試み、NRL、c-maf及びmafkの3種のmafファミリーに属する因子がマウスレンズで発現していることを明らかにした。MIPのレンズ特異的プロモーター領域にもMaf結合サイトのコンセンサス配列がAP2サイトのすぐ上流-73/-60bpに存在するため、ニワトリで単離されたL-maf(lens-Maf)の発現プラスミドを用いてMaf因子のMIPプロモーター活性への効果を調べるためにレンズ細胞へのco-transfection実験を行った。その結果、L-mafはMIPプロモーターの活性を抑制する働きがあることがわかった。以上の結果から、Sp1、及びAP2のvariant1,2,3と5及びc-maf,mafk,NRLのMafファミリーに属する因子間のネットワークがMIPの発現を調節し、レンズ上皮から繊維細胞への分化過程において重要な役割を果たしていることが示唆された。
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