1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09771497
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
天野 修 金沢大学, 医学部, 助教授 (60193025)
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Keywords | HGF / 下顎 / 骨形成 / 軟骨形成 / マウス / 発生 |
Research Abstract |
現在までの研究の結果から、肝細胞増殖因子(HGF)が種々の器官の初期発生において組織の分化に関わっていることがわかってきた。本研究においては、間葉系組織が軟骨、骨組織に分化するとともに、歯や舌など様々な組織発生を導き出す下顎の発生において、HGFの作用と生理的意義を解明することができた。すなわち、正常な胎生期のマウス下顎において、HGFは間葉系細胞が分泌し、また従来知られていた上皮以外にも間葉系細胞にHGFの特異的受容体(c-ret)が存在して、間葉を標的にする自己分泌傍分泌因子として働いていることが示唆された。無血清培地を用いた胎齢10日の胎児下顎の器官培養実験で得られた標本でも同じ結果が示された。特に骨形成が始まった培養片においてはc-retは骨芽細胞や軟骨細胞に存在して、下顎の胎児性骨格であるメッケル軟骨や下顎骨形成において重要な働きをしていることが示唆された。器官培養においてはHGBを培溶液に添加すると骨形成が促進され、骨体積が増加することが示されたが、c-retのアンチセンスオリゴヌクレオチドを加えてHGFの細胞内シグナル伝達をブロックすると、添加したHGFの効果が減弱することが示された。またHGFのアンチセンスオリゴヌクレオチドを培養液に加えて内因性のHGF合成をブロックすると、通常この時期や場所ではおこらないメッケル軟骨の骨化が見られた。しかしHGFを同時に添加すると軟骨の骨化はおこらなかった。 以上の結果から、下顎の初期発生に発現するHGFは間葉細胞からの膜性骨化による骨形成を促進するとともに、メッケル軟骨に働いてその骨化を抑制していることが示された。
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