1997 Fiscal Year Annual Research Report
三叉神経脊髄路核ニューロンの可塑性に対する抑制性入力の役割
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09771552
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Research Institution | The Nippon Dental University |
Principal Investigator |
武田 守 日本歯科大学, 歯学部, 講師 (20227036)
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Keywords | 三叉神経脊髄路核 / 侵害受容 / 受容野 / 促通 / 可塑性 |
Research Abstract |
三叉神経脊髄路核ニューロンの可塑性に対する抑制性入力の役割を明らかにするために、今年度は、咀嚼筋に分布する侵害受容線維をマスタードオイルにより刺激した時の三叉神経脊髄路尾側亜核(SpVc)の受容野特性の変化を電気生理学的に解析した。 ウレタン麻酔下のラット(n=7)のSpVcにガラス微小電極を刺入し口腔顔面領域に受容野を持つニューロン(n=7)を単一ユニット放電として記録した。受容野電気刺激による求心性線維の伝導速度は2.8-5.6m/secであり、Aδ線維と推定された。受容野の同定されたユニット(n=7)は触・侵害刺激に応答する広域作動(WDR)ニューロン(5/7)であり、残りのユニット(2/7)は侵害刺激のみに応答する特異的侵害受容(NS)ニューロンと分類された。視床への投射が確認されたユニットはWDRニューロンのうち2例であった。 次に、同側咀嚼筋にマイクロシリンジを用いて5-10μlの10%マスタードオイル(MO)を注入後、5分間隔で上記特性の変化を解析した。MO投与後、5-10分でほとんどのユニット(6/7)において触・侵害刺激に対して放電頻度の増加(触刺激:280%;侵害刺激:211%)が観察された。この変化は20-40分後には回復した。一方、受容野の拡大(約250%)はMO投与後5-10分後において全てのユニットにおいて観察された。新たな受容野の適刺激に対する反応性は、MO投与前の性質を反映していた。拡大した受容野は30-50分後には回復した。 以上の結果より、三叉神経脊髄路尾側亜核のWDR及びNSニューロンは咀嚼筋からの侵害入力により、(1)触・侵害刺激に対する興奮性の増大(促通)、(2)受容野の拡大が誘発され、この変化は可逆的な変化であることが示唆された。
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