1997 Fiscal Year Annual Research Report
免疫不全ウイルスに特異的な全身系・粘膜系免疫応答の誘導およびその解析
Project/Area Number |
09771567
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
川端 重忠 大阪大学, 歯学部, 講師 (50273694)
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Keywords | AIDS / HIV / SIV / ワクチン / 粘膜免疫 / IgA |
Research Abstract |
ヒト免疫不全ウイルス(HIV)保有者は発展途上国において近年,増加の傾向がみられる.そこで,より効果的なワクチンの開発は待望され,各国研究者がこの課題に精力的に取り組んでおり,多少効果の期待できるワクチンの報告がされている.しかし,それらはほとんどが全身系を介した感染防御を目的としており,確実かつ効果的にHIVの感染を防御できるワクチンは未だ開発されていない.実際,HIVの感染経路は麻薬常習者を除き,そのほとんどが粘膜面を介したものである.ここ2-3年,経粘膜投与による全身系・粘膜系両者に抗原特異的なB細胞免疫応答を誘導する試みが報告されはじめたが,その例もまだ少数で,Th細胞レベルの解析まで及んだものはほとんど報告されていない.粘膜面においてTh2系T細胞の産生するIL-5およびIL-6が分泌型IgA産生細胞を誘導することは知られている.つまり,いかにしてこのTh2型サイトカインを効率よく誘導するかということが,粘膜面において分泌型IgA産生B細胞を分化・増殖させる鍵になる.粘膜系とともに全身系の免疫能を賦活するほうが感染防御の意味からも重要である.これまでの実験でサルの泌尿生殖器関連リンパ節近傍にSIVgp120,p27タンパクを免疫すると全身系はもちろん粘膜系にも特異的Igを誘導することができた.2回目,3回目の免疫によりその反応は増強された.1回の免疫で,特異的IgG抗体の産生は強く誘導された.抗原特異的なIgAの誘導も3回目の免疫後に観察され,すなわちこの免疫法が粘膜系において免疫反応を惹起したことを示している.サイトカインの産生を調べると,in vitroにおいてPBMCを刺激すると免疫群より分離したCD4^+T細胞は有意にIL-5やIL-6の産生を亢進した.このことからもTh2型のサイトカインはIgAの誘導に関わっていることが示された.これらの結果をふまえて,強力な経ロアジュバントであるコレラトキシンとともにSIVタンパク抗原を投与し,効率の高い粘膜免疫を誘導するとともに,B細胞・T細胞の働きをみるための実験を行う予定である.
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