Research Abstract |
歯髄・象牙質再生における液性因子の役割を明らかにするため,本研究では,1,25-dihydroxyvitamin D3〔1,25(OH)_2D_3〕がヒト歯髄細胞のオステオカルシンとオステオネクチン発現に及ぼす影響についてヒト歯髄細胞培養系を用いて検討し,以下の結果を得た。 (1)オステオカルシン産生に及ぼす影響:1,25(OH)_2D_3非存在下では,歯髄細胞の増殖期および増殖停止期において,歯髄細胞はオステオカルシンを産生しなかった。歯髄細胞の増殖期において1,25(OH)_2D_3は,オステオカルシン産生を少し誘導した。一方,増殖停止期に歯髄細胞に1,25(OH)_2D_3を作用させると,オステオカルシンの産生は著しく増加した。増殖期および増殖停止期における1,25(OH)_2D_3によるタンパク質の増加は,オステオカルシンmRNAの増加に相関していた。 (2)オステオネクチン産生に及ぼす影響:オステオネクチンの産生は増殖期は低いレベルだが,増殖停止期には,著しく増加した。増殖停止期において,1,25(OH)_2D_3は,オステオネクチン産生とそのmRNA発現を減少させた。 1,25(OH)_2D_3は,骨組織代謝に関わる重要な全身的調節因子である。また,象牙芽細胞には1,25(OH)_2D_3の受容体が認められている。このように,1,25(OH)_2D_3は象牙質形成に重要な役割を担っていると考えられる。オステオカルシンおよびオステオネクチンは象牙芽細胞が分泌し,さらに,それらタンパク質は象牙質に含まれいる。しかしながら,1,25(OH)_2D_3が歯髄細胞のオステオカルシンおよびオステオネクチン産生に及ぼす効果は不明な点が多い。本研究の結果,1,25(OH)_2D_3は,増殖停止期の歯髄細胞において,オステオカルシンおよびオステオネクチンの発現に対して異なる作用を示すことが明らかとなった。このことにより,1,25(OH)_2D_3はin vivoにおいて,象牙芽細胞に作用しオステオカルシンおよびオステオネクチンの産生を制御し,象牙質形成に関与していることが考えられた。
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