1998 Fiscal Year Annual Research Report
口腔内抗菌性蛋白質の歯質への接着機構の解明と臨床応用への検討
Project/Area Number |
09771697
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
永留 初實 九州大学, 歯学部, 助手 (30284516)
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Keywords | リゾチーム / 抗菌性 / グラスアイオノマーセメント / 二次齲蝕 / S.Mutans |
Research Abstract |
平成9年度の実験よりリゾチームの正電荷(アミド基)とハイドロキシアパタイトの負電荷(リン酸基)が吸着に関与し、リゾチームはハイドロキシアパタイトへの吸着サイトが抗菌活性部位の反対側であることから吸着状態で抗菌性を保持している可能性を示唆した。この吸着状態での抗菌性に着目し、平成10年度は抗菌性の実験を行い、臨床応用について検討した。 まずヒト母乳からリゾチームの精製を行った。6人の母乳からの精製量は1Lから平均で約15mgであったが、これは過去の文献の量と比較するとかなり少ない量であった。ヒトリゾチームをニワトリリゾチームと比較したところ、未吸着状態での活性値は低かったが、吸着状態は NMR の結果よりニワトリリゾチームと同様に活性部位の反対側で吸着しており、吸着状態で抗菌活性を有している可能性が高いことが分かった。 次にリゾチームの抗菌性を臨床的に検討した。一般的に臨床に用いられているグラスアイオノマー系のセメントにリゾチームを添加し、その性状を調べた。最大5%のリゾチームを添加したセメントはその物理的性質を変化させることはなかった。しかしある種の細菌に対し、抗菌性を示した。 M.Luteus に対しては非常に強い抗菌性を示した。また齲蝕原因菌の一種といわれる S.Mutans に対してもその抗菌性を確認した。しかし義歯性口内炎の原因菌といわれる C.Albicans に対して抗菌性を確認することができなかった。今回用いた抗菌性を調べる実験法は培地を利用したディスク法、吸光光度計を用いる方法であるが、詳細を調べるために今後は ATP アナライザーを用いて生菌数を調べる方法を追加しなければならないと考えている。またセメントに直接リゾチームを添加する方法では永久的なものとは考えられない。そこでセメントにリゾチームの抗体を添加し、口腔内のリゾチームをセメントに集中することで二次齲蝕を予防できる材料の開発に着手した。
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