1997 Fiscal Year Annual Research Report
高週齢ラットにおける咀嚼動態の変化が中枢神経系の老化に及ぼす影響
Project/Area Number |
09771705
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Research Institution | Health Sciences University of Hokkaido |
Principal Investigator |
池田 和博 北海道医療大学, 歯学部, 講師 (10193195)
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Keywords | 咀嚼機能 / 加齢 / 痴呆 / 中枢神経 / シナプス可塑性 / アセチルコリン / コリン作動性ニューロン |
Research Abstract |
咬合・咀嚼によって生じる長期間の中枢神経系への高頻度の刺激は,海馬や大脳皮質をはじめとするニューロンヘの「長期増強」を起こし,シナプス可塑性を促進する要因となることが考えられるため,高齢者においては,咬合・咀嚼が全身の健康保持や寝たきりおよび痴呆の予防などのために重要な役割を果たしていることが推測される.本研究では,高過齢ラットにおける歯の喪失および飼育飼料形態の変化が中枢神経系に及ぼす影響について検討するために,脳内に広く存在する神経伝達物質であるアセチルコリン(ACh)に着目し,コリン作動性ニューロンに関して,以下の実験を行なった. 生後24通齢の雄性Wisterラット60匹を用い,25週齢になった時点で以下に示す10匹ずつの6群に分割する.すなわち,実験期間を通して固形飼料にて飼育する(対照群)40週齢群と60週齢群,固形飼料と同一成分の粉末飼料に代えて飼育する(粉末飼料群)同2群,臼歯部歯冠部を切除し,固形飼料と同一成分の粉末飼料に代えて飼育する(臼歯切除群)同2群である.各群5匹については,観察週齢になった時点で灌流固定を行った後,脳を全摘出し,前頭断薄切切片を作成した.得られた切片のChAT含有ニューロンを識別するため,酵素抗体法を用い,中隔核・対角帯核,および,三又神経運動路核に局在するChAT-Positive neuronの細胞数を算出した.なお,ラット1匹について連続する10切片のChAT含有ニューロンを算出し,各群の平均値を求めた.その結果,中隔核・対角帯核におけるコリン作動性ニューロンの数は,対照群に比して臼歯切除群では,40週齢,60週齢のいずれにおいても,有意な減少が認められた(p<0.01).また,三叉神経運動核においては.各群間には有意差は認められなかった.なお,各群の両観察部位において,加齢に伴うコリン作動性ニューロン数の減少は認められなかった.
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