1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09771745
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Research Institution | Tokyo Medical and Dental University |
Principal Investigator |
原田 清 東京医科歯科大学, 歯学部, 助手 (30228639)
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Keywords | MRSA / 異所性骨化 / 菌体外毒素 / 菌体内毒素 |
Research Abstract |
最近我々は、難治性の慢性MRSA感染創内から骨様の石灰化組織の排出を認めた極めて稀な症例を経験し、現在もその治療に苦慮している。本患者は下顎骨骨切り咬合改善術を施行し、術後経過は良好であった。術後1年を経て口腔内の瘢痕修正術を施行したところ不幸にして感染を併発し、同創部からMRSAが検出された。種々の治療法も奏功せず、創部は徐々に悪化して骨髄炎を併発したために下顎骨区域切除術を余儀なくされた。その結果骨髄炎は緩解したものの、区域切除時の口腔内外の手術瘢痕から激痛を伴って骨様石灰化組織が排出する病態が出現し、MRSAも同時に検出された(本症例については、症例報告としてAsian Journal of Oral and Maxillofacial Surgery Vo.9(2):135-138に掲載した)。 本研究ではこの病態を解明する目的で、すでに単離保存されている患者のMRSAを浮遊培養で増殖させ、その培養上清あるいは抽出された菌体内成分をラットの骨髄細胞を培養して得られる線維芽細胞様の細胞に添加して反応を観察した。その結果、菌体外毒素あるいは菌体内毒素の影響と思われる細胞の増殖抑制がみられ、同時にアルカリンフォスファターゼ活性の低下が観察された。また同じくMRSAの培養上清あるいは菌体内成分をラットの皮下あるいは筋肉内に1週間反復注入してその局所反応を観察したところ、炎症反応は生じるものの本症例のような異所性の骨化現象を認めるには至っていない。現在は、添加する菌体成分の濃度を変えて反応の違いを観察するとともに培養する細胞も違うものに変えたり、ラットへの注入実験については投与期間をもっと長期にする等の検討を加えている。
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