1997 Fiscal Year Annual Research Report
エプ-リスに生成する過酸化脂質の微小循環障害に関する研究
Project/Area Number |
09771750
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Research Institution | 福井医科大学 |
Principal Investigator |
小川 透 福井医科大学, 医学部・附属病院, 助手 (10291379)
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Keywords | エプ-リス / 過酸化脂質 / レーザードップラー血流計 / 微小循環 |
Research Abstract |
エプ-リス組織の脂質過酸化が微小循環動態に及ぼす影響について検討した.本研究に先立ち,予備実験として顎顔面部血流量の対称性について検討した.すなわち微小循環動態は多くの変数に依存するが,片顎性疾患の血流は反対側同名部位の血流との比較により評価できるものと推定した. 対象は健全有歯顎者40例で,レーザードップラー血流計(アドバンス社製,ALF21D)により,上下顎前歯から小臼歯までの歯槽粘膜,また頬粘膜,顎関節部,舌,鼻翼基部および口角について対称的位置にある部位の血流量を同時に測定した.測定値はモニターの血流波形が安定した時点での平均血流量を用いた.統計学的処理は各測定点の血流量を対標本として回帰分析を行い,平均値の差の検定にはWilcoxon符合付順位和検定を用い,p<0.05を有意差ありとした. その結果,左右側の血流量は有意な相関を示し(r=0.832,p<0.01),回帰直線y=0.9x+2.5が得られ,また部位別の各群で変動を認めた.したがって顎顔面血流動態の対称性が示されたことから,エプ-リス組織の微小循環動態の観測は罹患部位と反対側同名部位の健常な歯槽粘膜の血流量を測定するものとした。また,摘出試料について組織化学的過酸化脂質染色(Schiff染色)を行い,脂質過酸化による組織障害について検索した. 対象はエプリ-リス症例3例で,臨床所見および病理組織学所見から,いずれも骨膜由来の線維性エプ-リスと診断された.その結果,罹患部位の血流量は15.4±17.0(n=3,以下,平均値±標準偏差),対照部位は23.6±21.3(n=3)であり,罹患部位では血流量がやや低下する傾向を示した(p=0.11).組織化学的検索では,血管内皮がSchiff反応陽性を示した.このことは脈管系組織が選択的に障害されていることを示しており,罹患部位での血流量低下を裏付ける結果と推察される.
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