1997 Fiscal Year Annual Research Report
全身の恒常性維持において咀嚼が担う役割を中枢メカニズムがら解明する研究
Project/Area Number |
09771842
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
藤瀬 多佳子 九州大学, 歯学部, 助手 (50284518)
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Keywords | 咀嚼 / 脳機能 / 摂食行動 / 体温調節 / 心拍数 / 口腔感覚 / ラット |
Research Abstract |
食欲を調節する物質に関する研究から、食事は、食欲を満足させるとともに、脳を賦活化することが明らかになってきた。また近年、咀嚼と全身の健康についての関係がクローズアップされてきている。本研究は、咀嚼時の感覚入力の変化が、日内リズム、体温調節にいかなる影響を及ぼすか、動物の食行動および体温などをリアルタイムで記録解析することにより、その機序を解明することを目的とした。麻酔下で、正常なWKA成熟雄ラットの復腔内に、送信器を埋め込み、術後の回復を確認後、無麻酔無拘束化で、固形飼料または液体飼料に対する摂食行動を、サーカディアン測定箱内で連続記録し、摂食量、飲水量、行動量および体温変化を解析した。食行動時に異なる口腔内感覚を生じさせると考えられる固形飼料と液体飼料、すなわち、咀嚼を伴う飼料と咀嚼を伴わない飼料を与えた場合、体温および心拍数が食事前後でどのように変化するか、比較検討を行った。 (1)液体飼料摂取群と固形飼料摂取群の実験期間中の体重増加量に有意差はなかった。 (2)液体飼料摂取群では、固形飼料群に比べ、明期の摂取カロリー量が有意に増大した。 (3)平均体温は、明暗両期において、固形飼料摂取群より液体飼料摂取群が高かった。 (4)固形飼料群では、摂食行動開始後30分で、体温が有意に上昇してくることがわかった。一方、液体飼料摂取群では、摂食行動開始後15分間は、体温が有意に低下し、摂食行動開始後30分では、体温の有意な上昇が認められた。 (5)心拍数は、固形飼料摂取群および液体飼料摂取群いずれの群においても、摂食開始後15分間に、増加してくることがわかった。 以上のことから、性状の異なる固形飼料と液体飼料は、咀嚼時に異なる口腔内感覚を生じさせ、消化過程や代謝に異なる影響を与える可能性が示唆された。
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