1997 Fiscal Year Annual Research Report
歯周疾患患者の唾液中の細胞外マトリックス量とその病態との関連性
Project/Area Number |
09771859
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Research Institution | Meikai University |
Principal Investigator |
村上 幸生 明海大学, 歯学部, 助手 (00286014)
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Keywords | 成人性歯周炎 / 唾液 / フィブロネクチン / P.gingivalis / 線毛 / サイトカイン / 細胞外マトリックス / 調節作用 |
Research Abstract |
私は最近、フィブロネクチンが成人性歯周炎の病原性細菌であるPorphyromonas gingivalisの線毛結合蛋白質の一つで、本菌の線毛を介する歯周組織細胞への付着にこれが調節的役割を演じている可能性のあることを報告した。ごく最近、唾液中の数種の蛋白質が本菌の線毛と結合し、口腔感染症を引き起こす可能性が報告された。しかし本菌線毛と成人性歯周炎患者の唾液中のフィブロネクチンとの相互作用や病態との関連性、唾液中のフィブロネクチンの機能的役割などについての詳細な知見は得られていない。ゆえに私は、成人性歯周炎患者刺激唾液中のフイブロネクチン量とその病態との関連性について検討した。唾液は本学付属病院を受診した103人の患者よりパラフィン刺激全唾液を回収し、実験材料とした。成人性歯周炎の臨床的評価はRusselのPeriodontal Index(PI)を指標にした。線毛はYoshimuraらの方法に従い回収した。唾液中のフィブロネクチンはproteolysisされていたが、本菌線毛の43kDa.フィンブリリンに特異的に結合した。また、その量は歯周炎の重症度と相関して減少していた。一方、唾液中のフィブロネクチンの成人性歯周炎における役割について検討したところ、本線毛によるマウス腹腔マクロファージでの炎症性サイトカイン遺伝子発現は健常者の唾液処理により著明に抑制されたが、歯周炎患者のそれではあまり抑制されなかった。また、この抑制効果は坑フィブロネクチン抗体の処理により著明に回復した。この結果は本菌による成人性歯周炎がその唾液中フィブロネクチンにより調節される可能性を示唆した。ゆえに唾液中フィブロネクチンは本疾患においては細菌の付着や炎症に対して防御的役割を演じている可能性が考えられ興味がある。今後は他の細胞外マトリックスでもこのような調節作用が存在するか否かについて検討したいと考える。
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