Research Abstract |
得られたパラフィン連続切片を用いて病理組織学的,免疫組織化学的検索を行った。免疫組織化学的検索にあたっては,calcitonin gene-related peptide(CGRP)の蛍光免疫組織化学染色を行ない,共焦点レーザー顕微鏡にて単位面積当たりの蛍光強度(IR)の比較を行なったところ以下の結果を得た。 1.病理組織学的検索において,Er:YAGレーザー群は術後1,4日に,ハイスピード・ドリル群は,術後21,35日に線維芽細胞増生所見が多く認められた。なお,術後21日までに修復象牙質形成が認められたラットは,Er:YAGレーザー群に多く観察された。その他の検索項目においては,顕著な差は認められなかった。 2.蛍光免疫組織化学的検索において,ハイスピード・ドリル群は,術後4日に顕著な増加し,21日後にコントロールレベルに減少した。一方,Er:YAGレーザー群においては,術後1日に増加のピークが観察されたが,ハイスピード・ドリル群の増加のピークに比べ低く,またコントロールレベルへの減少は,術後7日に認められた。術後4,7,14日のハイスピード・ドリル群と,無処置群およびEr:YAGレーザー群間で,統計学的有意差を認めた(p<0.05ANOVA)。 以上の結果より,Er:YAGレーザー群に観察されたCGRP-IRの早期の増加は,線維芽細胞増生を早期より引き起こし,修復象牙質形成を促進させることが示唆された。また,CGRP-IRの増加のピークと,コントロールレベルに減少するまでの両群の違いから,Er:YAGレーザーは,ハイスピード・ドリル群に比較して,神経性炎症を引き起こしにく神経性炎症性の疼痛の発現が低い事が示唆された。 この結果は,今まで解明されていなかった,レーザー窩洞形成後の歯髄神経反応の研究に大きく貢献し,今後のレーザー歯科治療の基礎的な研究を支えるものであり,今後,組織修復に関与するといわれている成長因子等の発現について検索する予定である。
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