1997 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト乳歯歯根膜細胞の増殖と分化に対するIGF-Iの影響に関する細胞生物学的研究
Project/Area Number |
09771876
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Research Institution | Kanagawa Dental College |
Principal Investigator |
松澤 光洋 神奈川歯科大学, 歯学部, 助手 (60288082)
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Keywords | 乳歯歯根膜細胞 / IGF-I / 細胞接着・伸展因子 |
Research Abstract |
小児の歯周組織の成長発育過程には、乳歯の萌出、脱落、永久歯の萌出という顎の成長発育に伴って行われる歯周組織の改造現象が存在している。その改造現象において重要な役割を担うと考えられる歯根膜細胞の細胞生物学的機能を明らかにするため、骨系細胞の増殖と分化を調節するサイトカインであるInsulin-like Growth Factor-I(IGF-I)を乳歯歯根膜由来線維芽細胞(HPLF-Y)に作用させ、その増殖と分化、特に細胞接着伸展因子(CASFs)に与える影響について検索を行い若干の知見が得られた。要約すると、confluentに達したHPLF-YのcontrolとIGF-I添加群の培養上清(conditioned medium:CM)を陰イオン交換クロマトグラフィーで分離し、得られた分画をcoatingした培養プレート上にHPLF-Yを播種後、接着した細胞のDNA量を定量して接着活性を測定した。さらに、その活性分画を再クロマトグラフィーにかけて各々の分画に分離後SDS-PAGEを行い、抗ヒトオステオネクチン抗体を用いてWestern blottingによりCASFsの同定を行った。その結果、IGF-Iを添加したCMでは接着活性の低下が認められ、また、SDS-PAGEにて40kDaのバンドとして存在するタンパク質はオステオネクチンであることが判明した。永久歯歯根膜由来線維芽細胞(HPLF)で報告されているようにCASFsは複数の因子であり、今回分離されたHPLF-YのCASFsも高分子に幾つか複数存在していることがわかったHPLFにおけるCASFsの意義は創傷治癒における組織再生に深く関わっていることが示唆されているが、歯根完成から歯根吸収という変化をダイナミックに遂げる乳歯にとっては、単に組織維持だけでなく、他の因子と相互作用してHPLF-Yと周囲組織をregulateしている可能性が高い故に、今後、HPLF-Y/CASFsの同定とIGF-Iとの相互作用およびその機能検索を継続して行う必要があると考えられた。
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