1997 Fiscal Year Annual Research Report
遷移金属配位部位と基質結合部位とを併せ持つ分子の開発
Project/Area Number |
09771896
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
眞鍋 敬 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助手 (00251439)
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Keywords | 触媒 / 相間移動触媒 / 不斉合成 / アルキル化反応 / ケトエステル / 四級ホスホニウム / エナンチオ選択的 / 水素結合 |
Research Abstract |
本研究の目的は、遷移金属触媒や相間移動触媒等の触媒分子において、触媒活性部位と基質捕捉部位とを併せ持つ新規触媒分子を開発することである。また、本研究の特色は、従来別々に研究されていた触媒分子と有機化合物捕捉分子とを一分子へと融合させた点にある。この研究を発展させていくことにより、高度な反応選択性を持つ触媒分子を開発できる可能性があり、学術面だけでなく実用面での意義も大きい。 平成9年度においては、多点水素結合による基質捕捉部位と四級ホスホニウム部位とを併せ持つ新規キラル相間移動触媒分子をデザイン・合成した。また、この触媒分子を、β-ケトエステル類の不斉アルキル化反応に用いたところ、最高で40%ee前後の不斉選択性で生成物が得られた。この選択性発現の機構を明らかにする目的で、構造が異なる触媒分子を種々合成し、それらの分子を上記の不斉アルキル化反応に用いた。その結果、基質捕捉部位と四級ホスホニウム部位の両方とも、その構造が不斉選択性に大きく影響を与えることが明らかとなった。さらに、基質のβ-ケトエステル類の構造を変化させたところ、t-butyl 2-oxocyclopentanecarboxilic acidが最も良い不斉選択性を与えることがわかった。相間移動触媒による反応は様々な魅力があるにもかかわらず、キラルな相間移動触媒を用いたエナンチオ選択的反応の例は非常に少ない。本研究で開発した触媒分子は、従来開発されてきたキラル相間移動触媒とは構造が大きく異なっており、新しい系統の触媒分子である。
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