1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09771905
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
前田 初男 大阪大学, 薬学部, 助教授 (00229311)
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Keywords | アシルトリブチルホスホニウム塩 / アシルホスホネート / Grignard試薬 / カルボニル化合物 / 還元電位 |
Research Abstract |
本研究の目的は、P-アシルリン化合物の陰極還元電位とその反応性の比較検討により新規多機能型アシル基導入剤を創製することである。そこでまず、RCOP^+Bu_3(1)、RCOP(O)(OEt)_2(2)およびRCOP(O)(OPr-i)_2(3)をアシルリン化合物として選び、それらの還元電位をcyclicvoltammetryを用いて測定した。その結果、対応するRCOCl(4)に比べて1は著しく正側の電位に還元波を示し、特に脂肪族由来の1は対応する4より1V(vs.SCE)以上も易還元性であることを見い出した。また、2および3の還元波は、対応する4のそれに比べて0.5V以上も正側に観察された。これらの結果から、1〜4の親電子剤としての反応性は1>2,3>4の順であることが示唆された。そこで、この作業仮説の妥当性を評価するため、これらのアシル化合物とRMgBrとの反応を行った。既に報告しているように、1は1当量のRMgBrと円滑に反応し、対応するケトンを高収率で与えた。また、ClCOOEt由来の1を用いれば、様々なエステルも効率良く合成できることも見い出した。一方、2または3とRMgBrとの反応の粗生成物をアルカリで処理すると対応するケトンまたはエステルが良好な収率で得られた。反応の行程数、収率等の点では、1を用いる手法がより優れたケトン合成法であるが、2または3を用いる手法には、過剰のRMgBrを使用しても三級アルコールが副生しない、ある種の1を用いた時に観察されたRMgBrによるエノール化が副反応として起こらない等の利点を有することを明らかにした。従って、アシルリン化合物の陰極還元電位が、そのものの親電子剤としての反応性の良好な指標となることだけでなく、1または2,3を使い分けることにより、RMgBrを用いて4を出発物質として様々なタイプのケトンならびにエステルが簡便に合成できることを明らかにした。現在、2または3の還元種のアシルアニオン等価体としての可能性を検討している。
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