1997 Fiscal Year Annual Research Report
リポシドマイシンの全合成:含フッ素イミダ-トによるグリコシル化を基盤として
Project/Area Number |
09771914
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Research Institution | Toyama Prefectural University |
Principal Investigator |
中島 範行 富山県立大学, 工学部, 助教授 (40188959)
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Keywords | リポシドマイシン / イミダ-ト / グリコシル化 / 1,4-ジアゼパノン / 全合成 / ペプチドグリカン |
Research Abstract |
リポシドマイシンC(1)に代表されるリポシドマイシン類は、Streptomyces griseosporeusから、バクテリアのペプチドグリカンの生合成阻害物質として単離構造決定されたヌクレオシド抗生物質であり、結核菌、多剤耐性菌、日和見感染菌に阻害活性を有し、毒性が極めて少ない特徴を有している。本研究では、ペプチドグリカンの新しい生合成阻害剤の開発と1の生理活性機構解明に向け、1ならびにその誘導体の選択的合成を目的とした。しかしながら1の立体化学は未だ報告されておらず、詳細なNMR実験から可能性の極めて高い立体化学を有する二つの化合物を合成ターゲットと設定し、コアとなるジアゼパノン環部の効率的合成ルート開拓から研究を開始した。 本年度は、入手容易なシスアリルアルコールを出発原料に、シャープレス不斉酸化を用い2種のアミノアルコールを合成後、両者をカップリング、分子内イミンの形成、還元を経るジアゼパノン環部の効率的合成ルート開発に成功し、合成ターゲットと設定した二つの化合物のうち一方の異性体を合成した。さらに本合成ルートによりもう一つの異性体を合成し、両者のNMRデータを天然物から得られる分解産物と比較することにより立体化学の決定が行なえると考えている。 また、含フッ素イミダ-トを脱離基するグリコシル化の有効性を検討する目的で、原料となる含フッ素ニトリルの簡便合成ならびにニトリルから含フッ素イミダ-トへの変換を達成し、一般的な含フッ素イミダ-トのone-pot合成に成功した。現在、1のアミノ糖部分に相当する含フッ素イミダ-トを調整し、そのグリコシル化を検討中である。 来年度は以上の結果をふまえ、最終行程に至るために必要な保護基を選択しながら、それぞれのフラグメントのカップリング反応の順番を慎重に決定し、1の合成を完了させる予定である。
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