1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09771940
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
星野 忠次 千葉大学, 薬学部, 講師 (90257220)
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Keywords | HIV-1プロテアーゼ / 活性部位 / フラップ領域 / 結晶構造 / 水分子 / ES複合体 / アスパラギン酸 / 水素結合 |
Research Abstract |
現在まで、HIV-1プロテアーゼに様々な阻害剤が配位したX線結晶解析構造が示されているが、これらの構造の分析から、本酵素空洞内には、いくつかの水分子が特定の場所に存在することがわかってきた。中でも、ループ状活性部位近傍の4個の水分子と阻害剤とフラップ領域の間に存在する水分子は高頻度で観察される。本研究では、これらの水分子の役割について、理論的な解析を進めてきた。 ループ状活性部位に存在する水分子は、アミノ酸残基との間で複数の水素結合が形成する。また、フラップ領域の水分子も、阻害剤とフラップ領域の間で複数の水素結合を形成している。これらの水分子が酵素活性を現すES複合体の構造と密接に関係していると推定している。また、ループ状活性部位の水分子は、同様のループ状活性部位を有するレニンやペプシンにおいても観察されることから、アスパラギン酸プロテアーゼに共通するループ状活性部位の安定性に非常に重要な役割を担っている可能性が強い。 本研究では、以上の水分子がHIV-1プロテアーゼのES複合体の形成の維持にどのような役割を果しているのかを分子動力学(MD)シミュレーションを用いて明らかにしつつある。例えば、ループ状活性部位に水分子が配位していない場合は、HIV-1プロテアーゼの構造が保てないことを示した。一方、フラップ領域の水分子はプロテアーゼの構造保持には、直接的に関与しないことが判った。この結晶は、HIV-1プロテアーゼを初めとする生体内の有効なアスパラギン酸プロテアーゼの作用機構において、水分子が重要な要素であることを示唆している。
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