1997 Fiscal Year Annual Research Report
ヒト・アドレナリン受容体におけるG蛋白質活性化部位の立体構造
Project/Area Number |
09771944
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
松本 治 京都大学, 大学院・薬学研究科, 助教授 (10231599)
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Keywords | アドレナリン / 受容体 / G蛋白質 / 立体構造解析 / X線解析 / NMR / ペプチド合成 |
Research Abstract |
ヒト・アドレナリン受容体の細胞内第三ループに対応する15残基ペプチドは、それ自身でG蛋白質を活性化するので、受容体の機能構造を考える上で有用なモデルを提供している。このペプチドについて、約5mM、pH8.0の条件下、600MHzNMRを用いて90%TFE中でのNOEデータを収集し、プログラムX-PLORのDistance Geometry法によりその立体構造解析を行った。 ペプチドはヘリックス構造を有し、CDスペクトルの結果と一致した。特に正電荷を持つアミノ酸が一方に片寄る両親媒性ヘリックス構造をとり、正電荷クラスターを形成していた。N末の数残基とC末のLYSが活性に大きな影響があることがわかっている。ペプチドは途中で折れ曲がった構造を取っており、両末端が近傍に位置することが分かった。このペプチドの正電荷クラスターは、G蛋白質表面に広く分布する負電荷とうまく相補的な関係になる。このような両親媒性ヘリックス構造は、アミノ酸配列のまったく異なるマストパランやメリチンなどの蜂毒由来のペプチドにも見られている。 また、15残基の内、N末10残基に相当するペプチドについても同様に解析を行ったところ、やや立体構造は異なるものの同様な正電荷クラスターの形成が見られた。逆にC末10残基に相当するペプチドは前2者と異なりG蛋白質活性化能がないことが知られているが、立体構造解析の結果、少なくとも同じ溶液状態では一定のコンフォメーションを取っていないことがわかった。このことからG蛋白質を活性化するためにはヘリックス構造に伴う正電荷クラスターの形成が深く関係していることが示唆された。 ペプチドとG蛋白質複合体の立体構造解析のためにG蛋白質精製を試みた。牛脾臓より抽出し精製を進めた。このとき、疎水性クロマトグラフィーに定法よりやや疎水性の強いゲルを用いると分離能が上昇することがわかり、大量精製のめどがついた。
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