1998 Fiscal Year Annual Research Report
ニューロコンピュータを利用した生体高分子の電子状態の計算方法の開発
Project/Area Number |
09771952
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Research Institution | Rikkyo University |
Principal Investigator |
常盤 広明 立教大学, 理学部, 講師 (10221433)
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Keywords | 非経験的分子軌道法 / ニューロコンピュータ / ダイオキシン / 環境ホルモン / プレダイオキシン / アート錯体 / 反応解析 / 二電子反発積分 |
Research Abstract |
本年度は特に,昨年度に開発した二電子反発積分および各種分子内ポテンシャルのニューロコンピュータによる最適化法を実際の系に適用して,その有効性を立証することを試みた。具体的には次の3つの課題を取り扱った 1. ダイオキシン生成メカニズムの理論的解析 ダイオキシンを始めとする環境ホルモンに対する問題は,今や化学を始めとする自然科学的な視点に留まらず,最近では大きな社会問題となっている。しかしながらこれほどまでに問題とされているダイオキシンに関しても,化学的な観点からみると実際にどのような化学反応によって生成されるのかは解明されていなかった。そこで本研究では,プレダイオキシンと孝えられる樹種の異性体からダイオキシンが生成する反応経路を理論計算によって定量的に解析した。その結果,化学物質由来のダイオキシン発生反応のメカニズムを世界で初めて明らかにすることに成功した。 この結果については1998年10月の環境トキシコロジーシンポジウム出発し,さらに1999年3月の日本薬学会年会で発表後,専門誌に投稿予定である。 2. 有機亜鉛アート錯体を用いた高選択的反応に関する理論的研究 アート錯体は従来,中心金属にアルミニウムやホウ素を用いたものが広く用いられてきたが,近年,亜鉛を用いたアート錯体が注目され,幅広い有機合成への応用され始めてきている。そこで本研究では,モデル反応を用いず実際の合成反応を理論的に計算するターゲットととして,この有機亜鉛アート錯体を用いた反応を取り上げた。異なる配位子を亜鉛上に導入したアート錯体は,その配位子の移動能の差によって高化学選択的に反応が進行することが最近の実験より示唆されているが,反応中間体および遷移状態を含めた反応解析によって,この移動能の差を理論的に立証することに成功した。計算結果を基にして,より有効な合成反応の摸索が期待される。これらの結果については1998年11月の有機反応討論会で発表し,1999年3月の日本化学会春季年会および目本薬学会年会で発表予定である。
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