1997 Fiscal Year Annual Research Report
魚類味覚・嗅覚系をモデルとした味・匂い情報の処理機構および記憶形成機構の研究
Project/Area Number |
09771960
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
庄司 隆行 北海道大学, 薬学部, 教務職員 (00241349)
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Keywords | 魚類 / 嗅覚 / 嗅球 / ニオイ応答 / 記憶 |
Research Abstract |
本研究では、無数の味・ニオイ物質を受容する哺乳類ではなく、受容する化学物質が限定されるためモデル動物として好適であると考えられる魚類を用い、中枢神経系における味・ニオイ情報の処理機構および記憶形成機構を明らかにすることを目的として以下の実験を行なった。 (1)ニジマス嗅覚単一僧帽細胞のニオイ応答特性 ニジマス成魚をガラミンにて不動化し、タングステン電極または微小ガラス電極を用いてニオイ刺激に対する応答を嗅球僧帽細胞層からの外部誘導により記録した。ニオイ刺激には種々のアミノ酸を用いた。その結果、ニオイ刺激に対する個々の僧帽細胞の応答の特異性は低く、魚類の場合、嗅球のレベルで完全にニオイ情報の選別が行なわれるのではないことがわかった。しかし一方、嗅球全体から見た応答特異性の分布様式には違いが見られた。例えばL-Ser刺激に対して嗅球後部ではニオイ応答(インパルス頻度の増大)が観測されたが、前部においては逆にインパルス頻度は減少した。このことは、異なる応答特性を持つ嗅神経繊維が嗅球の異なる部位に投射しそれぞれ糸球体を形成していることを示し、嗅球全体としてなんらかのニオイ情報の統合が行われていることを示唆している。 (2)サクラマス嗅球における母川記憶形成の可能性 サクラマス(3歳魚;北大洞爺湖臨湖実験所産)を用いて、母川水のニオイにのみ特異的に応答する嗅球僧帽細胞あるいは嗅球内の部位の有無を(1)と同様の方法で調べた。その結果、少なくともこれまで得られたデータからは、母川のニオイに特異的な応答を示す細胞あるいは部位は見つからなかった。このことは、おそらく単一のニオイではない母川のニオイの記憶は、嗅球のレベルで形成されるのではないということを示唆している。
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