1997 Fiscal Year Annual Research Report
プロスタグランジンE_2の生理作用における受容体サブタイプの重要性と医薬応用
Project/Area Number |
09771979
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
杉本 幸彦 京都大学, 大学院・薬学研究科, 助教授 (80243038)
|
Keywords | プロスタグランジンE2 / 受容体サブタイプ / インドメタシン / アスピリン様抗炎症薬 / 新生児死亡 / 肺高血圧 / 動脈管開存 / 遺伝子欠損マウス |
Research Abstract |
プロスタグランジン(PG)E_2の多彩な生理作用は4種の受容体サブタイプによって引き起こされるが、選択的薬物の不足から、各生理作用に連関するサブタイプの解明や生理的意義の評価は困難であった。そこで我々は、PGE_2とその受容体による生理作用をサブタイプ毎に明らかにすることを目的として、4種類の受容体サブタイプに関して遺伝子欠損マウスの作製を試みた。その結果、現在(平成10年3月)既に4種類全てのサブタイプの欠損マウスを得ることに成功した。 これらのうち、EP4受容体の欠損マウスは出生後72時間以内に死亡することを発見した。これら死亡マウスの病理組織像によると、肺の鬱血が認められ循環系障害の可能性が考えられた。そこでこの新生児循環系におけるEP4受容体mRNAの発現を調べたところ、動脈管の管壁に大量の発現が認められた。動脈管は胎児期に肺動脈から大動脈へ血流をバイパスさせる血管であり、野生型のマウスにおいては生後約6時間で閉鎖する。ところが、EP4欠損マウスでは生後12時間を経過しても動脈管が開存しており、死亡した個体については全て同様に開存していることが判明した。一方、総数の5%未満ではあるが生き残る個体が存在し、これらのマウスでは動脈管が一部狭窄ないしは閉鎖していることが判明した。以上の結果から、動脈管開存が新生児死亡の原因となっていることが推測された。本来平滑筋の弛緩に働くと考えられてきたEP4受容体の欠損により何故開存するのか、また何故一部の個体が生き残るのか等の問題点は未解決なものの、本研究によって、PGE_2が胎児期から新生児期への環境適応に必須の役割を果たしていることが推察される。 他のサブタイプ、EP1、EP2、EP3の各欠損マウスについては、健常に成育が可能であり、現在さらに生殖生理等の解析に加えて、病態条件下における個体反応についても解析中である。
|
Research Products
(6 results)
-
[Publications] Sugimoto et al.: "Failure of parturition in mice lacking the prostaglandin F receptor." Science. 277. 681-684 (1997)
-
[Publications] Murata et al.: "Altered pain perception and inflammatory response in mice lacking prostacyclin receptor." Nature. 388. 678-682 (1997)
-
[Publications] Katsuyama et al.: "Distinct cellular localization of the mRNAs for prostaglandin E receptor subtypes in the mouse uterus during pseudopregnancy." Endocrinology. 138. 344-350 (1997)
-
[Publications] Morimoto et al.: "Cellular localization of mRNAs for the prostaglandin E receptor subtypes in the mouse gastrointestinal tract." Am.J.Physiol.272. G681-G687 (1997)
-
[Publications] Hasumoto et al.: "Characterization of the mouse prostaglandin F receptor gene." Genes to Cells. 2. 571-580 (1997)
-
[Publications] Hasumoto et al.: "Expression of mRNA encoding PGF2alpha receptor associates with luteal cell apoptosis in the ovary of the pseudopregnant mouse." J.Reprod.Fertil.109. 45-51 (1997)