1997 Fiscal Year Annual Research Report
モノクローナル抗体を用いた泡沫細胞内および血中の酸化LDL代謝様式の解析
Project/Area Number |
09771999
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
板部 洋之 帝京大学, 薬学部, 講師 (30203079)
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Keywords | 酸化LDL / 泡沫細胞 / マクロファージ / モノクローナル抗体 / 酸化PC / 動脈硬化 / 心筋梗塞 / LCAT |
Research Abstract |
抗酸化LDLモノクローナル抗体DLH3は、アルデヒド基を含む9CHO-PCなどのPCの過酸化反応生成物をエピトープとし、免疫組織化学で病巣内のマクロファージ由来の泡沫細胞を顕著に染色する。これまでに、この抗体を用いた酸化LDLの高感度定量により腎透析患者やLCAT欠損症患者の血漿LDL酸化レベルが健常者に比べ有意に高いことを見出している。今年度は更に以下の知見を見出した。 (1)冠動脈疾患の患者の中でも特に急性心筋梗塞患者において血漿LDL酸化レベルが著しく上昇した。そして粥状硬化が進行していると考えられる不安定狭心症患者でも血漿LDL酸化レベルが高値であったのに対し、安定狭心症患者は健常者健常者とほとんど変わらず、症状の重篤度と血漿LDL酸化レベルに相関性があることすることを見出した。(2)J774マクロファージ細胞に、アセチルLDL、酸化LDLを取り込ませ、その後の細胞内での各LDL残存量の経時変化をヒトアポBに対するサンドイッチELISAで調べた。酸化LDLあるいはアセチルLDLを1時間取り込ませた後に培地交換すると、いずれも速やかに細胞内残存量が減少し24時間後にはほとんど完全に消失した。各LDLを細胞に取り込ませる時間を24時間に延長した場合も細胞内の酸化LDLもアセチルLDLは速やかに減少したが、アセチルLDLが細胞内から完全に消失するのに対し、酸化LDLのみは24時間かけても代謝されずに細胞内に約20%が残存することを見出した。細胞内蓄積性の酸化LDLは特殊な細胞内分布をしている可能性があり、現在さらに検討中である。このことから、ヒト病巣の泡沫細胞内に検出されているDLH3抗原が、酸化LDLに由来し、ある長さの期間を経て蓄積したものである可能性が示唆された。(3)DLH3の抗原である酸化PCが血漿中の酵素LCATにより代謝され多様な代謝産物を生じることを見出した。LCATはこの性質により、血漿LDLの酸化変性防御因子としての働きがあることが示唆された。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] Hiroyuki Itabe,et al.: "Appearance of cross linked proteins in human atheroma and rat pre-fibrotic liver detected by a new monoclonal antibody." Biochimica et Biophysica Acta. (印刷中). (1997)
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[Publications] 板部 洋之: "酸化LDLの測定" Therapeutic Research. 18. 12-19 (1997)
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[Publications] 板部 洋之: "モノクローナル抗体を用いた生体過酸化脂質の測定" 脂質栄養学. 6. 109-112 (1997)
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[Publications] 高野 達哉,他: "過酸化脂質と動脈硬化、そして腎疾患へ" 腎不全. 9. 7-11 (1997)
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[Publications] 高野 達哉,他: "動脈硬化と過酸化脂質" フリーラジカルの臨床. 12. 15-20 (1997)
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[Publications] 入江 真,他: "アルコール性肝障害における脂質過酸化-特に酸化LDLの働きについての検討" アルコールと医学生物学. 17. 139-142 (1997)
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[Publications] 高野 達哉,他: "粥状動脈硬化の発症" 病理と臨床. 15. 778-784 (1997)
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[Publications] Hiroyuki Itabe,et al.: "Pathophysiology of lipid peroxides and related free radicals." Japan Scientific Societies Press, 182 (1998)