1997 Fiscal Year Annual Research Report
食細胞の活性化に関与するイノシトールリン脂質3-キナーゼの活性化機構
Project/Area Number |
09772017
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Research Institution | The Institute of Physical and Chemical Research |
Principal Investigator |
松尾 毅 理化学研究所, 字井特別研究室, 研究員 (90291088)
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Keywords | 食細胞 / シグナル伝達 / イノシトールリン脂質3-キナーゼ / レクチン / チロシンリン酸化 |
Research Abstract |
レクチンの一種であるコンカナバリンA(ConA)を単球系細胞株であるTHP-1細胞に添加すると、活性酸素産生や貪食等の細胞応答が引き起こされた。THP-1細胞をConAで刺激するとイノシトールリン脂質3-キナーゼ(PI3-キナーゼ)が活性化され、PI3-キナーゼの細胞内生成物であるホスファチジルイノシトール3,4,5-三リン酸(PIP3)の産生が観察された。細胞を予め、PI3-キナーゼの特異的阻害剤であるワ-トマニンで処理すると、ConAによる活性酸素産生及び貪食が抑制された。このことから、PI3-キナーゼはConA刺激による活性酸素と貪食に関与していることが示唆された。細胞を、Gタンパク質(Gi)を介する情報を遮断する百日咳毒素(PT)で処理すると、ConAによるPIP3産生と活性酸素産生が抑制された。このことからConA刺激による活性酸素産生にはGiによって仲介されるPI3-キナーゼの活性化が必要であることが示唆された。興味深いことに走化性因子fMLPのアンタゴニストであるt-Boc MLPをConA刺激時に共存されると、活性酸素とPIP3の産生は共に抑制された。つまりConAはfMLP受容体を介して、活性酸素とPIP3の産生を引き起こしていると考えられた。ConA刺激による活性酸素産生には、Giによって仲介されるPI3-キナーゼの活性化が必要であることはこのことからも支持される。一方細胞をConAで刺激すると癌現遺伝子産物であるCblがチロシンリン酸化され、チロシンリン酸化されたCblはPI3-キナーゼに会合し、活性化した。しかしPT処理やt-BocMLP処理によってCblのチロシンリン酸化は影響を受けなかったが、前述の通りConA刺激によるPIP3産生は抑制されたので、ConA刺激によってチロシンリン酸化されたCblが活性化するPI3-キナーゼは、ConA刺激によるPIP3と活性酸素の産生には寄与しないと考えられた。以上の知見より、ConA刺激によって、Giとチロシンキナーゼを介する少なくとも2つの経路でPI3-キナーゼが活性化され、活性酸素産生にはGiを介したPI3-キナーゼの活性化が重要であることが示唆された。
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