1997 Fiscal Year Annual Research Report
内在性不安誘発物質の脳内動態からみた薬物依存症診断法の確立とその治療への応用
Project/Area Number |
09772056
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Research Institution | Kawasaki Medical School |
Principal Investigator |
桂 昌司 川崎医科大学, 医学部, 助手 (80204452)
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Keywords | 内在性不安誘発物質 / Diazepam binding inhibitor / 薬物依存 |
Research Abstract |
薬物依存成立とdiazepam binding inhibitor (DBI) 生合成調節機構との関連性、およびDBIが内在性不安誘発物質であることをふまえて、退薬後の情緒障害との関連性についてより明確な見解を得ることを目的として、種々の依存性薬物による依存動物モデルを用い、DBI mRNA発現およびその蛋白量の変化を検討した。その結果、alcohol, nicotine, cocaineおよびmorphineのいづれの薬剤の連続投与による依存成立時において、DBI mRNA発現量ならびにDBI蛋白量の著明な増加が認められた。また、これら薬剤の退薬症候発現時におけるDBI mRNA発現量は、対照群のみならず依存成立群に比しても有意な経時的増加を示した。さらに、同様の成績がcommunication boxを用いた心理的ストレス負荷動物についても認められ、この増加は中枢型ベンゾジアゼピン受容体作用薬(flunitrazepam)の前処置により完全に抑制されることが判明した。これらの成績より、DBIの脳内変化は薬物依存の成立、特に退薬後に認められる情緒障害の発症に関連していることが明らかとなった。依存性薬物投与によるimmediately early gene mRNA発現量の変化について検討したところ、DBI mRNA発現の増加に先行してc-fos mRNA発現量の上昇が認められた。したがって、DBI mRNA発現の増加にはAP-1 transcription facterの活性化が関与していることが明らかとなった。以上の成績より、薬物依存成立過程ならびに離脱症候発現時に認められる精神症状の変化にDBIの脳内変化が関与している可能性はきわめて高いものと考えられ、DBIの脳内変化による精神機能の変化を指標とした薬物依存症発症の評価法としての有用性が認められたことから、未だ統一見解の得られていない薬物依存症の病態解明とその治療方針に有用な基礎データが得られたものと考える。
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Research Products
(6 results)
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[Publications] Katsura, M.et al.: "Vinconate, a cognitive enhancer, and PI turnover-phosphollipase C system in the brain." Behavioural Brain Research. 83. 75-81 (1997)
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[Publications] Simosato, K.et al.: "Role of cerebral spermidine in the development of sensitization to convulsant activity of cocaine and lidocaine." Brain Research. 775. 198-202 (1997)
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[Publications] Katsura, M.et al.: "Functional involvement of benzodiazepine receptors in ethanol-induced increases of diazepam binding inhibitor (DBI) and its mRNA in the mouse brain." Molecular Brain Research. (in press). (1998)
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[Publications] Katsura, M.et al.: "Continuous treatment with nicotine increases diazepam binding inhibitor (DBI) and its mRNA in the mouse brain" Molecular Brain Research. (in press). (1998)
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[Publications] 栗山欣弥 他: "アルコール・薬物の依存症" 医学書院, 13-27 (1997)
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[Publications] 大熊誠太郎 他: "メディコピア35 アルコール" 富士レビオ株式会社, 119-126 (1997)