1997 Fiscal Year Annual Research Report
フェノバルビタールによる肝薬物代謝酵素遺伝子の転写活性化機構の解明
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09772058
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
村山 典恵 慶應義塾大学, 医学部, 助手 (90219949)
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Keywords | CYP2B1 / phenobarbital / hepatocyte / CAT assay / thyroid hormone / DHEA |
Research Abstract |
フェノバルビタール(PB)誘導型CYP分子種、CYP2B1及びCYP2B2の発現は、内分泌ホルモンのうち特に成長ホルモン(GH)と甲状腺ホルモン(T_3)によって、抑制的に調節されていることが明らかになっている。今回CYP2B1遺伝子の転写活性化機構を解明するにあたり、まず内分泌ホルモンの抑制的な調節に関与している領域について、詳しく検討するために、CYP2B1遺伝子5^,-非翻訳領域上流7kbをクロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)レポーター遺伝子と融合させ、hepatocyteへの導入を試みた。リン酸カルシウム法によりCYP2B1-CAT融合遺伝子を導入したhepatocyteでは、2mMPB添加によりCAT活性には増加が認められた。この活性は、100nMT_3添加により著しく減少し、PB無添加時と同等の値を示した。このことからT_3は、CYP2B1遺伝子5^,-非翻訳領域上流7kb内の領域に作用して、CYP2B1の誘導を抑制している可能性が示唆された。最近、PBの誘導にはある種のタンパク(PB-binding protein)が関与していることが報告されている。T_3のCYP2B1のタンパクレベルでの抑制的な作用はタンパク合成阻害剤のシクロヘキシミドを添加すると著しく減弱することから、直接的な影響だででなく、抑制的な作用発現に際しては何らかのタンパクの合成を必要としている可能性も考えられ、今後この点について、さらに詳しく検討していく。肝に存在する代謝酵素のうちで、リンゴ酸脱水素酵素(malic enzyme)はT_3とデヒドロエピアンドロステロン(DHEA)の併用によって著しく増加する。CYP2B1について、これらホルモンの影響について検討したところ、T_3添加で著しく減少したテストステロン16β-OH化活性及びウェスタンブロット法によるCYP2B1分子種含量はDHEAを添加したところいずれも増加が認められ、10μMの添加でテストステロン16β-OH化活性は、ほぼPb添加時の値に戻った。さらにCAT融合遺伝子を導入した系でもDHEA単独添加ではCATの活性に著しい変動は認められなかったのに対してT_3添加による活性の抑制に対して、DHEA添加では用量依存的な拮抗作用が認められた。従って肝CYP2B1分子種の発現に関して従来より知られている成長ホルモンや甲状腺ホルモンのみならず、DHEAの関与が考えられた。またDHEAは単独ではCYP2B1タンパク及びCAT活性に著しい影響を示さず、その作用はT_3の存在下でのみ認められた。現在T_3とDHEAによるCYP2B1の発現の調節については、論文を作製中である。また、4.4kbよりも短い領域を導入した際のCATの活性についてはPB無添加の時点でも著しく高い値が認められ、PBによる誘導効果が減弱することから、今後は誘導時だけではなく、常在レベルの抑制的な発現調節に関与している領域について比較検討する。
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