1998 Fiscal Year Annual Research Report
IgGの糖鎖が胎児の免疫能と胎盤通過性に果たす役割に関する研究
Project/Area Number |
09772071
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Research Institution | Showa University |
Principal Investigator |
木村 聡 昭和大学, 医学部・臨床病理学教室, 講師 (30255765)
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Keywords | IgG / 臍帯血 / 糖鎖 / 新生児 |
Research Abstract |
血清IgGのFc部分にはアスパラギン結合型の糖鎖が付着しており、3次構造の維持に関与している。我々はFMOC(fluoromethylchroloformate)を標識物質とした糖鎖分析法を開発し、昨年度は臍帯血IgGの糖鎖が成人と異なる事を報告した。一方、血清IgGには胎盤通過性があるため、糖鎖の違いが胎盤通過性に影響を及ぼす可能性が考えられる。そこで今年度は臍帯血と妊婦血清のIgGを精製し、両者の糖鎖組成を比較した。 同意に基づき25例、12組の妊婦より血液、および臍帯血を採取した。臍帯血は分娩直後、母体血は分娩の前後24時間以内に採取されたものを使用した。プロテインAセファロースで血清からIgGを精製、シアリダーゼ処理の後、N-glycanaseにて糖鎖を遊離したのちFMOCを標識し、HPLC法にて分離、定量を行った。 その結果、非還元末端にガラクトースをもたない糖鎖(G0)の全糖鎖中に占める割合は、臍帯血で7.88±3.6%、母体血9.75±5.3%と、臍帯血で有意に低かった(p=0.039)。血清IgG量との積からG0をもつIgGの濃度を算出すると、両者の差は拡大した(p=0.008)。一方、2つのガラクトースをもつ糖鎖(G2)の全糖鎖中に占める割合は、母児間で有意差が認められず、量的には母児間でG0よりも強い相関が得られた。G2の割合および絶対量では母児間に有意差を認めず、高い胎盤通過性を反映した結果となったが、G0の割合は妊婦で有意に高く、絶対量でみるとさらに差は明確であった。この差が生じた理由は、G0の胎盤通過性がG2よりも低いためと推定される。しかし児側で産生されるIgGにG0の割合が低いか、G0の半減期が児では短いという可能性も残され、現在検討中である。いずれにしても本研究、は胎児と母体のIgG糖鎖構造の比較を行った、世界で初めての報告となる。
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