Research Abstract |
日常検査として,PCR法が導入され結核の診断は迅速に行えるようになった。しかし,治療薬剤選択に関する情報は治療開始時には得られない。治療薬剤選択のため薬剤感受性試験は,純培養を含め8〜10週と長期間を要する。また,培養不能菌の薬剤耐性の情報を得ることは全く不可能である。本研究の目的は,多剤耐性菌の迅速な検出法として,PCRによるrpoB遺伝子増幅産物の切断酵素断片長多型性(PCR-CFLP)検出法を開発することである。まず,臨床菌株から耐性菌株を収集し,これを用いてrpoB遺伝子のPCR-CFLPを試み,さらに菌株マーカーとなりうる反復配列IS6110遺伝子のPCR法によるフィンガープリント検出との比較を行う。リファンピシン耐性菌株の同定は,薬剤感受性試験にて臨床分離菌株から抗結核剤(RFP,SM,PAS,INH,KM,EB)の薬剤感受性スペクトル培地を用いたマイクロタイター法にて行った。その結果,臨床分離株から21/42(50.0%)株にリファンピシン耐性菌株がみられた。また,REF,SM,lNHの3剤に耐性のある多剤耐性菌株は6/42(14.3%)株であり,すべての薬剤(RFP,SM,PAS,INH,KM,EB)に感受性のある株は5/42(11.9%)株であった。IS6110遺伝子の反復配列の検出は,臨床検体およびコロニーからDNAを抽出し,PCRを用いて増幅後アクリルアミドゲル電気泳動で解析し,銀染色にて検出した。この方法により培養を必要とせず直接検体から菌株の鑑別同定が可能となった。リファンピシン耐性菌株と感受性菌株の鑑別のための検査として反復配列のパターン解析を行ない,パターンの比較を行った。 リファンピシン耐性株に特異的なパターンおよびバンドは認められず,リファピシン耐性株と感受性株を比較してもパターンの差は認められなかった。同パターンを示す株の感受性検査を比較したところ,リファンピシン耐性株と感受性株が存在した。また,多剤耐性株と感受性株を比較したところパターンに差は認めらなかった。PCR-CELP法によるrpoB遺伝子の点突然変異検出は,現在検討中である。
|