Research Abstract |
研究フィールドとして協力が得られたN老人病院(療養型病床群,18病棟945床)は,MDS(Minimum Data Set,高齢者アセスメント表)を用いて3か月ごとにアセスメントを反復実施している。そこで本年度は,1997年9月時点のMDSデータおよび各病棟婦長からの聞き取り調査をもとに研究対象者69事例を抽出した。その際,以下の5つの選定条件を設けた。1.アルツハイマー型痴呆または脳血管性痴呆の診断を受けていること,2.食事に何からの援助を必要とすること,3.年齢は65歳以上であること,4.1時間程度の坐位保持が可能であること,5.上肢に機能障害がないこと。 この対象者の摂食場面を中心に参与観察し,内容分析した結果,以下の知見を得た。 1.痴呆性老人の摂食困難事項として,21項目が抽出された。これらの事項は,(1)自力摂食に向けた援助の際に生じるもの,(2)スプーンによる摂食介助(spoon-feeding)の際に生じるもの,(3)摂食援助の方法に依拠せず生ずるもの,に3分類された。 2.摂食困難に影響を及ぼす要因を,次のように暫定的に整理した。1つは,痴呆による認知障害や注意力の障害を増悪する要因であり,食事姿勢,食物形態,食事環境,援助者の介入方法などである。もう1つは,食欲に影響を及ぼす身体的要因であり,嗅覚や味覚の低下,活動状況,排泄状況,薬物などの要因である。 上述の知見をもとに,痴呆性老人の摂食困難のアセスメント表(第一案)を作成した。 今後は,このアセスメント表の妥当性について検討するとともに,摂食困難事項とそれに対する影響要因や自力・援助摂食回数測定にもとづく摂食リズムとの関係性,摂食困難のパターン分類,摂食困難の数量的評価尺度の作成を予定している。
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