1997 Fiscal Year Annual Research Report
日本における電気事業再編成以前の電力周波数統一計画の変遷
Project/Area Number |
09780031
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岡本 拓司 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 講師 (30262421)
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Keywords | 電気事業 / 電力周波数 / 電力国家管理 / 周波数統一 / 東邦電力 / 起電力連系 |
Research Abstract |
本年度は、主として、戦前期になされた電力周波数の統一の試みうち、五大電力時代に東邦電力に策定された計画と、国家管理期に大東亜電力懇談会によって策定された計画に関して、全体像の把握と資料の収集を行うことを中心に研究を進めた。 東邦電力による周波数統一計画は、副社長・調査部長であった松永安左エ門を中心として策定されたものである。この計画は、当時米国において発表された「超電力連系」計画に刺激をうけ、日本全国における電力連系の実施に関する提言を東邦電力が発表した際、電力連系を円滑・可能にする条件の整備の一環として提案・公表された。ここでは、統一周波数として60サイクルが主張されているが、これは、1923年末現在の電力関連施設の分布状況を勘案し、60サイクルへの統一の方が50サイクルへの統一よりも費用が少なくてすむとの推算に基づいて採用された数字である。本計画は、超電力連系という提案が大胆すぎたこともあって、具体的な実施計画を生むにはいたらなかった。 電力国家管理への以降後、初めて周波数問題が議論されたのは、大東亜電力懇談会においてであった。この会議は、日本発送電総裁を第一代の会長とし、9配電会社・朝鮮電業・鴨緑江水電・台湾電力・満州電業などを会員とする任意団体であったが、企画院・大東亜省・陸運軍省・両総督府・満州国政府の関係者も出席する、影響力の大きい組織であった。1942年より開始した周波数統一に関する議論では、「大東亜共栄圏」内および世界全体で周波数分布の体制なども勘案された上で、結論として50サイクルの採用が提言された。議論の動向は、戦時期の産業観・技術観をよく反映しているものであるといえる。
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