1998 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09780039
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
酒井 利信 筑波大学, 体育科学系, 助手 (40281711)
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Keywords | 修験道 / 智慧の剣 / 呪術 / 辟邪の剣 / 不動明王 / 「剣」の観念 |
Research Abstract |
本研究は、修験道思想における刀剣観の日本における文化的特徴を明らかにすることを目的とするものである。 ・不動信仰と智慧の剣修験道は、日本古来の神道的山岳信仰と密教が融合して成立したものであり、至ってシャーマニズム的色彩の強い信仰である。その崇拝対象の代表的なものとしては、不動明王があげられる。不動明王は、この尊格を象徴するところの智慧の剣を所持することにおいて語られる場合が多い。刀剣が超越者を象徴する構造は古代神話の世界から頻繁にみられるが、ここでは智慧の剣が調伏(障害をもたらす者を降伏させる)の機能をもって認識されていることに特徴がある。 ・中国道教思想との類似性と相違点 調伏の機能をもって刀剣を認識する精神構造は、古代中国道教の書である『抱朴子』などにもみられる。ここにみられる刀剣は、邪を辟ける呪術行為に関係して述べられる。いうなれば辟邪の剣として認識されていたということであり、調伏の機能をもって認識される智慧の剣との類似性が認められる。ここに東アジアにおける「『剣』の観念」に係わる普遍相を見ることができる。 しかし、辟邪の剣は、智慧の剣が不動明王を象徴するように、何らかの超越者を象徴したりはしない。中国の場合、刀剣を神との関係によって神秘的に認識するのではなく、至って具体的・合理的に解釈しようとする。この点での相違は明らかである。逆に言えば、ここに日本的独自性が現れていると言える。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 酒井利信: "刀剣文化受容に伴う古代信仰の変化について" 武道学研究. 31(2). 40-54 (1998)
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[Publications] 酒井利信 他11名: "武と知の新しい地平(刀剣観にみる日本人の精神性)" 昭和堂, 223(76-95) (1998)