1998 Fiscal Year Annual Research Report
脊髄反射回路と筋活動に対する中枢性制御の筋電図学的解析
Project/Area Number |
09780054
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
渡部 かなえ 信州大学, 教育学部, 助教授 (50262358)
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Keywords | 運動プログラム / H反射 / 表面筋電図 |
Research Abstract |
本研究は、上位中枢からの命令と、末梢からの情報による反射命令が、最終共通路である運動ニューロンにどのように統合されて筋活動に反映されるのかを、主動運動(急速頭部水平回転運動)実行に付随して下肢筋に見られる変化から検討することを目的として行った。脊髄運動ニューロンプールの変化はH反射法で、筋活動の変化は表面筋電図加算平均法を用いて観察した。左右のヒラメ筋(足関節伸筋)と前脛骨筋(足関節屈筋)、および頭部回転運動の主動筋である胸鎖乳突筋に電極を貼付し、H反射・表面筋電図を記録した。H反射導出のための刺激は、頭部回転開始100ms前〜始後数100msにランダムに入れた。 実験の結果、座位ではH反射の変化動態にはJendrassik効果が強く現れていて、主動運動の開始直前又は同時に下肢筋運動ニューロンプールの興奮性が高まった。表面筋電図の変化動態も、多くの場合H反射法のそれに一致したが、一部の被験者で反対の方向への変化が見られた(H反射法では促通・筋電図では抑制)。主動筋活動の開始と下肢筋に抑制が起こったタイミングから、シナプス前抑制が関与している可能性があると思われる。また立位では、主動運動開始に先行して、下肢筋活動に変化が現れた。これは頭部回転運動の実施による重心の変化を予め予測して発現した筋活動であり、運動プログラムによるものであると考えられる。頭部回転運動によって頭頸部の受容器由来の反射入力があるが、下肢筋活動の変化パターンは被験者によって様々であり、反射パターンに合致するとは限らなかった。これらの結果から、運動プログラムは多様性があり各人固有のパターンを持つこと、反射命令よりも上位中枢の運動プログラムからの命令が優位であり、その固有の運動プログラムに付随するコマンドによる下肢筋活動にも各人固有の運動パターンが発現する、と推察された。
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