Research Abstract |
運動学習の場面では,学習者は,運動に対する適切な表象を形成する必要がある.一方,指導者は,抽象的な言語を用いて表象の形成に寄与する運動情報を提供している.また,言語によって運動が伝達される場合,抽象的な言葉から実際の具体的な運動を構成するための方略が必要となる.実際の学習場面では,換言,比喩,擬態語,指示語などの多くの方略が利用されている.そこで,本研究では,指導者が運動を構成するために用いる擬態語について調査し,擬態語のもつ特徴について検討した.さらに,学習者により形成される運動表象に対し擬態語の果たす役割を検討した. スキー指導員を対象に,具体的な運動課題を呈示し,そこで示範とともに用いる言語的表現について調査した.また、大学生を対象とし,呈示された運動に対して運動表象を形成する際にどのような言語的表現(特に,擬態語)が用いられているかを調査した. その結果,言語的コード化するために「音への変換」と「動作への変換」といった方略が用いられていた.特に,擬態語による「音への変換」は,力の量と長さ(時間)の調整に対して有効であると考えられる.擬態語の種類は多くはなかったが,実際の指導では,発声の強弱や長さによって,1つのことばを使い分けていた(例えば,『ギュ,ギュ』と『ギュウ-,ギュウ-』).さらに,学習者も同様の擬態語を共有していたことから,擬態語の使用は,指導効果を高めるための有益な手段の一つであると考えられる.なお,擬態語は,学習者自身が発声したり,内言化することによって意味のあるものになると考えられる. 10年度は,言語的コード化された情報により形成された運動表象と実際の身体表現とを比較することにより,両者の関連性を検討する.
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