1997 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
09780078
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
北 一郎 東京都立大学, 理学研究科, 助教授 (10186223)
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Keywords | 高齢者 / 平衡機能 / 重心動揺 / 呼吸循環 / 運動習慣 |
Research Abstract |
本研究では、定期的な運動が加齢過程と関連する神経系機能の変化を有意に抑制できるかどうかについて検討するため、高齢者の平衡機能に焦点をあて、その可塑性と運動習慣の影響について行動学的および生理学的側面から解析することを目的とした。被検者は、運動経験及び運動習慣の異なる動揺病症状をもたない健常な中高年男女(男子9名、女子9名、平均年齢53.6±8.2歳)と若年男女(男子21名、女子13名、平均年齢22.4±2.1歳)を対象とした。被検者の運動習慣に関しては、質問紙法により運動種目・頻度・時間・継続年数について調査し、日常生活において特別な運動習慣のある群(運動群)と、特別な運動を行っていない群(非運動群)の2群に分けた。平衡機能の行動学的側面として、直立姿勢及び片足立ちにおける重心動揺(開眼及び閉眼、測定時間20秒)が測定された。重心動揺は重心動揺計を用いて測定し、左右方向(X-cm)、前後方向(Y-cm)の動揺の標準偏差(RMS)を算出した。また平衡機能の生理学的側面、すなわち姿勢制御に重要な神経系機能について解析するため、重心動揺測定中に下肢筋群(ヒラメ筋、前脛骨筋)の筋電図、呼吸数及び心拍数応答を測定し、時間的・空間的分析を行った。結果として、中高年者においては、運動群の方が非運動群に比べて、閉眼直立姿勢、開眼片足立ち及び閉眼片足立ちでの重心動揺の変動が小さい傾向にあった。また筋電図、呼吸循環応答に関しても運動習慣のある群では各姿勢に対する反応が小さい傾向にあった。しかし、若年者においては運動習慣の有無によって重心動揺、心拍数、呼吸数に有意な差異は認められなかった。以上のことより、平衡機能維持に対しては年齢が高くなるほど運動習慣が重要な要因となり、運動が加齢に伴う神経系機能の低下を一部抑制する可能性が示唆された。
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