1997 Fiscal Year Annual Research Report
近世後期における東海地方の武芸に関する文献学的研究
Project/Area Number |
09780096
|
Research Institution | Hamamatsu University |
Principal Investigator |
菊本 智之 常葉学園浜松大学, 国際経済学部, 講師 (70267847)
|
Keywords | 近世後期 / 武芸関係史料 / 松平定信 / 真田幸貫 / 東海地方 |
Research Abstract |
平成9年度は、まず、大学研究期間や公的機関などに所蔵されている武芸に関する文献目録などをまず検索し、主に、今回の研究テーマを進める上で特に重要であると思われる筑波大学と真田宝物館に所蔵されていた近世武芸に関する古文書を閲覧し、必要に応じて撮影を行い、一部解読作業まで実施した。 1.松平定信の嫡子の定永の時(定信の晩年)、白河藩は桑名藩へ移封されたこともあり、松平定信の武芸に関する史料は、主に東海地方の鎭国守国神社(桑名市)に所蔵されている史料を基に研究を進めてきた。今回新たに筑波大学に松平定信の著作による書物、及び関係史料が所蔵されていることが明らかとなり、これを閲覧・撮影・一部解読作業(継続中)を行った。これにより、白河藩から江戸を中継し、桑名藩に伝わった武芸の動向を一部解明する手がかりとすることができると考える。 2.定信の次男は松代藩真田家へ養子に入り幸貫と称し、8代藩主となっていることから、松代の真田宝物館を調査した結果、幸貫に関する武芸関係史料が数多く所蔵されていることが明らかとなった。幸貫に関する武芸関係史料の中には、定信が社会を治めていく上で重視した、甲乙流、起倒流に関する新たな伝書が含まれており、定信の最も理想とした武芸や近世後期の為政者が理想とした武芸思想など解明していく上で、重要な史料が発見されたといえる。現在、調査、史料収集、解読作業の継続中であり、平成10年度も当初よりこの作業を実施していく予定である。これらの事実から、定信が蘊奥を極め、生涯追求した甲乙流、起倒流が定信の子の代に嫡子定永の桑名藩だけでなく松代藩においても藩主の行う武芸として伝搬し行われていたことが初めて明らかとなった。これら予想以上の貴重な史料の発掘ができたため、やむを得ず、当初予定していた駿河、遠江、三河周辺の調査のうち未だ実施していない部分については、平成10年度に繰り下げて実施する予定である。
|