1997 Fiscal Year Annual Research Report
過疎地域における内生的住民組織の変容と地方行政の役割-大分県湯布院町と山形県小園町の事例-
Project/Area Number |
09780110
|
Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
金 どぅ哲 東北大学, 大学院理学研究科, 助手 (10281974)
|
Keywords | 過疎地域 / 内生的住民組織 / 地方行政 |
Research Abstract |
大分県湯布院町において温泉観光地の形成過程およびそこでの行政と住民組織との関係等に焦点を当てつつ、平成9年7月30日から9月2日までの間に住み込み調査を行った。今回の調査から得た主な成果は以下の通りである。 1.湯布院町における地元主導型の温泉観光地の形成は、初期には強力な行政のリーダーシップによるところが多かったが、次第に温泉旅館組合を中心とする住民組織がその中枢をなすことになった。 2.そのきっかけは、昭和40年代を前後にして登場した地域コミュニティーのリーダーたちが自前の温泉旅館の経営といった近視眼的な態度に止まらず、農業と観光の共存などといった地域づくり全体をも視野に入れた活動を展開し始めたことに求められよう。 3.その結果、湯布院町においては様々なレベルの内生的住民組織が活発に生成・代替・解消しており、そこでの組織原理は村落共同体的な「ムラ」の論理も働いているものの、社会の価値観の変化に基づく新しいタイプの住民組織が古い住民組織の役割を代替していると考えられる。 4.上記のような組織の代表的なものとして「由布院観光総合事務所」がある。これは形式的には由布院温泉旅館組合と由布院温泉観光協会とが共同で設立した事務所であるが、その役割は単なる観光に関わるものに止まらず、まちづくり全般にわたるシンクタンクの役割を担っている。また、「由布院観光総合事務所」は町の様々な内生的住民組織をつなぐコーディネーターの役割をもこなしている。 5.しかしながら、湯布院町には依然として農業と観光、温泉に恵まれた由布院盆地と農業を主産業とするその他の地域との格差が存在しており、この町の最大の課題になっているといえよう。
|