1998 Fiscal Year Annual Research Report
過疎地域における内生的住民組織の変容と地方行政の役割-大分県湯布院町と山形県小国町の事例
Project/Area Number |
09780110
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
金 〓哲 東北大学, 大学院・理学研究科, 助手 (10281974)
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Keywords | 過疎地域 / 内生的住民組織 / 地方行政 / 山形県小国町 / 岩手県東和町 |
Research Abstract |
今年度は山形県小国町において過疎問題への対応をめぐる政策プロセスや住民組織のあり方を中心に調査を行った.さらに,山村のみならず平野農村における過疎問題との比較も行うべく,水田単作農村である岩手県東和町での調査をも並行して行った.今年度の調査により得たおもな成果は以下の通りである. 1. 山形県小国町の面積は東京23区よりもやや広く,一時期には115を数えるほどの集落が町全域に散らばっており,昭和30年代以降激しい人口流出が生じたが,その空間的構造は町役場所在地を中心に同心円構造をなしていた.こうした問題に対処すべく小国町では拠点集落方式による集落再編成が行われた.すなわち,二次生活圏(町全域),一次生活圏(主に旧村),基礎集落圏の3段階に定住体系を築き,それぞれの中心を拠点集落として諸施設を整備しようとするものであった.しかし集落の移転は,結果として都会への挙家離村を促し,過疎を促進する結果となってしまった.また,旧滝集落からの移転によって形成された幸町の例から,内生的住民組織は移転先においても伝統行事の担い手として引き継がれていることが確認できた. 2. 岩手県東和町における生産調整は牧草転作を主な態様として推移してきたが,1990年代は牧草転作以外の態様を迫られている.農家個別的な農業生産が展開している開田地域では,調整水田の増加が特徴的であるが,総じて圃場条件の優劣が生産調整の対応を規定する.伝統的水田地域では,政策的な受け皿として設立された生産組合の特性ごとに,農家の階層分化の度合いが異なり,生産調整態様の推移にも差異がみられる.組合の形骸化によって下層農家の脱農化が進行している館では粗放的な態様が増加しているのに対し,生産調整に対して集団的な対応をとる沖では,組合農家の農地を有効に利用し,高収益の見込める作物を導入することで,牧草に依存しない生産調整態様が可能となっている.
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Research Products
(1 results)