1997 Fiscal Year Annual Research Report
大都市圏における生産緑地法改正の受容と都市型多就業農業の持続性
Project/Area Number |
09780112
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
山本 充 埼玉大学, 教養学部, 助教授 (60230588)
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Keywords | 都市農業 / 生産緑地 / 多就業農業 |
Research Abstract |
1992年に施行された生産緑地法改正による「生産緑地」の指定は、農家の申請に基づいており、この時、農家は将来の営農に関して選択を迫られた。農家の意志決定には、都市化の進展状況などの周囲の環境や、経営耕地規模などの経営条件や、農家の農業に対する態度などが影響を及ぼしていると考えられる。本研究では、まず、三大都市圏において、この生産緑地指定の動向を把握し、生産緑地指定を受けた地域、すなわち、将来にわたって営農を選択した農家の多くみられる地域の農業経営の特色と農家の戦略を明らかにすることを目的とする。 三大都市圏における生産緑地指定の状況をみると、この指定比率は都府県によって大きく異なっているが、東京や大阪、京都といった中心都市で高い値がみられ、その周辺諸県では低い指定比率にとどまっている傾向にあった。 首都圏における生産緑地指定比率も同様の傾向を示すが、その要因として、第一に、東京に近接した地域では、都市化が進む中で、すでに集約的農業の基盤を確立してしまっており、将来にわたる営農を選択したことが挙げられる。一方、その外縁のこれからまさに都市化の進む地域では、将来の営農に対する不安から、農地を宅地化する道の方を選んだと考えられる。また、外縁部では、農家は市街化調整区域内にも農地を所有しており、市街化区域の農地を宅地化農地としたこと、外縁部では、地価が低いため、宅地並課税の負担にも十分耐えられることも挙げられる。さらには、単に生産性の高い農業の存在ばかりでなく、自治体や農業団体のとりくみ、都市基盤整備の進捗状況など他の要因によっても、指定比率が規定されることが明らかとなった。 次年度においては、現地調査に基づき、「多就業農業」の概念を用いて農業が維持されている地域の農業経営の特色と農家の戦略を明らかにする計画である。
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