1997 Fiscal Year Annual Research Report
景観・場所がアイデンティティの再生産に果たす役割-琉球列島の門中化を中心に-
Project/Area Number |
09780116
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
大城 直樹 神戸大学, 文学部, 助教授 (00274407)
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Keywords | 民俗 / ナショナリズム / 差異のポリティクス / 御嶽 / 風水 / 墓地 / 絵図 |
Research Abstract |
アイデンティティの再生産に介在する景観や場所の役割について琉球列島を対象に検討を加えているわけであるが、本年度は八重山群島・石垣島と沖縄本島・名護市久志において現地調査を重点的に行った。また並行して史誌類等文献資料の収集、および現地での写真撮影をもとに、パーソナル・コンピュータでの映像資料の作成も行った。 まず石垣島では、主邑である四箇集落における「民俗」認識の歴史的過程について、地元新聞の記事をもとに調査した。琉球新報など沖縄県下の有力紙は昭和初期以降敗戦までの間、一部を除き現存していないが、戦火を脱がれた石垣島には地元紙が残されており、貴重な情報をそこから得ることが可能である。今回は、明治30年代の旧慣温存期後、昭和十年代までの間、風俗や習慣の差異がいかにして「民俗」として対象化され、諸々の言説によって価値付けられてきたか、その軌跡を把握することが出来た。具体的には、八重山神社の建設計画に見られるように、御嶽の空間性がいかに政治的実践の介入から切り離せないものであるかなどを明らかにすることが出来た。 一方、久志においては在住の棚原繁男氏所蔵の「佳城絵図分金」の調査を行った。墓地建造の際、風水師に頼んでその敷地を選定してもらうわけだが、その時に描いたものと思われる絵図である。形式的には久米島・上江洲家の墓地風水絵図と同種であるが、絵の描法や形象の種類において幾分か様相を異にしている。なおこの絵図にかかわる文書も現存しており、この種の絵図の解釈上、非常に重要な資料となっている。なお、現地では絵図資料の閲覧・調査のみならず、絵図に描き込まれている地物や風景の現地比定も行った。
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